公募研究
自閉スペクトラム症(ASD)者は、他者の視点を理解することが不得意であり (Frith, 2003)、その原因は、同時並行的な時間の認知に関する障害が原因であるかもしれない (熊谷, 2011)。ASD者による時間情報処理の困難さを示す重要な症例として、昔の出来事を予期せず鮮明に思い出す症状がある (杉山, 2000)。加えて、特定の感覚に対して過度に強く反応してしまう感覚過敏がある。感覚過敏の特性は、時間がもつ連続的変化を知覚することを難しくさせる。視点取得メカニズムを解明するために、第一に、大学生を対象として、時間情報と空間情報を独立に操作した物語を作成し、時間推移、空間変化の検出に与える主観的時間評価の効果とメンタルローテーションによる表象操作の効果を検討した。第二に、時間的展望をもつことや他者感情の推測に困難をもつASD者を対象に、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた検討を行った。大学生を対象とした研究は、2015年7月にミネアポリスで行われるSociety for Text & Discourseで発表をする。ASD者を対象としたfMRI研究は、現在データを取得している段階で、今年の前期には終了し、成果を論文としてまとめる。
1: 当初の計画以上に進展している
大学生を対象とした時空間視点取得の研究が、順調に進展している。さらに、2年目後期で行う予定であったASD者を対象としたfMRIの実験が、前期で終了する見込みである。以上のことから、当初の計画以上に進展していると考える。
大学生を対象とした時空間視点取得の研究に関して、成果を国際学会で発表し、国際学術雑誌に投稿する。ASD者を対象としたfMRI研究に関して、データを解析し、成果を国際学会で発表し、国際学術雑誌に投稿する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 図書 (3件)
Social Cognitive and Affective Neuroscience
巻: 10 ページ: 145-152
10.1093/scan/nsu126
Frontiers in Human Neuroscience
巻: 9 ページ: 124
10.3389/fnhum.2015.00124