公募研究
本研究は,ヒトを含めた動物に共通している時間認知を発達過程とともに縦断的に比較心理学的に検討することを目的としている。秒から分単位の時間知覚研究は,時間に関する比較心理学研究においてたいへん重要なものである。動物における実験的なオペラント条件づけの時間弁別課題では,間隔二等分課題やピーク法がよく用いられる。インターバルタイミングと呼ばれる短い時間認知は持続時間の知覚や情報処理能力を調べるものである。ラットとマウスを用いて数秒から数十秒のインターバルタイミングにおける発達メカニズムの比較心理学的な検討に焦点をあてるものである。課題が採択されてからラットとマウスで実験を継続して実施している。ラットではPI 30sスケジュールで長期間訓練すると,その反応ピークが非常に安定的に観察されることが今回の結果から明らかとなった。これらの得られた成果は国内・海外の学会で積極的に発表公表してきている。申請時に計画していた学会誌の特集号も,日本基礎心理学会の学会誌である「基礎心理学研究」に「時間認知の解明への学際的アプローチ」と題して特集号の企画が実現した。特集号には12本の原稿が寄せられて,査読を含めて現在その編集作業中である。海外の国際学会発表としては平成26年9月10日から12日までの期間,南米コロンビアの首都ボゴタで開催された国際比較心理学会において,重要な情報交換の場としてラットとマウスにおける時間認知の国際シンポジウムを企画して開催した。多くの参加者から非常に好評を得たシンポジウムであり,「こころの時間学」に関係する時間認知研究を世界に広める貢献ができた。今回のシンポジウムを通して国際的にも時間認知に関する比較心理学的な研究が注目されていると感じた。本研究は研究代表者である坂田が研究全体を取り仕切り時間認知に関する行動実験を実施している。
2: おおむね順調に進展している
ラットを用いた時間認知課題であるオペラント条件づけのピーク法と間隔二等分課題の訓練が先行研究で報告されているように順調に進んでいること,ラットのPI 30sスケジュールではその反応が非常に安定して観察されることが明らかになったこと,さらにマウスでもラットと同じPI 30sスケジュールのピーク法訓練を実施しており,ある程度の時間的行動パターンの形成が見られていること,および今後もこの実験を継続して実施していくことの目途がついていることから,来年度はこれらのデータを基にしてある程度の発達メカニズムの解明への期待がもてるため。
おおむね順調に進展していることから,今年度と同様に次年度以降もラット,マウスのピーク法および間隔二等分課題の訓練を続ける。個体数も増やしながら,縦断的な研究として時間情報処理に関する時間認知における発達メカニズムの解明をラットとマウスを中心にさらに進める予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件)
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