研究実績の概要 |
本研究の目的は時間認知における発達メカニズムの検討を比較心理学的に明らかにすることであり,そのためにラットとマウスにオペラント課題の時間認知課題を学習させた。平成27年度は初年度に続いてラットとマウスに,生体自らが反応で時間を作り出すピーク法(PI)を用いた時間弁別学習を行った。発達メカニズムの検討をするために経時的に実験を行う必要があった。 時間の刺激としてはスピーカーから音を提示してその音の提示時間を認知させる。時間産生課題であるピーク法では時間認知の刺激時間の幅は30 秒を基本としてそれよりも短い20 秒とそれよりも長い40秒も実施して,そのピークの移行過程も検討した。ラットではPI 30sスケジュールで長期間訓練すると,その反応ピークが非常に安定的に観察されることわかった。PI 30sからPI 20sへ,あるいはPI 30s からPI 40sへと強化設定時間を移行したときのピーク時間の変化から,新たな数理モデルを提案した(J Comp Neurosci, 2015)。時間情報処理に関連する脳部位の測定指標として,学習と関連して海馬から観察される海馬θ波も有効だとわかった(Behav Brain Res 2015)。 得られた成果は国内・海外の学会で積極的に発表公表してきている。申請時に計画していた学会誌の特集号も,日本基礎心理学会の学会誌である「基礎心理学研究」に「時間認知の解明への学際的アプローチ」と題して特集号の企画が実現した。平成27年度にこの特集号は発刊された。海外の国際学会発表としてはSociety for Neuroscience Annual Meeting に出席してインターバルタイミングに関する発表をして好評を得た。また同学会では多くの時間認知研究者と実りある議論をすることができ,この分野の研究発展の推進に寄与することができた。
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