研究実績の概要 |
本研究課題は、〈課題a:可能性様相を経た時制認識の分析〉〈課題b:分岐表象における日常概念の分析〉〈課題c:認知心理学的な実証可能性の検討〉の三つの柱から成り、平成26年度には課題a,課題bのそれぞれについて、下記論文を学会誌に発表した。[論文1] 青山拓央 2014, 「時間は様相に先立つか」, 『哲学』 65号, 日本哲学会.[論文2] Takuo Aoyama, Shogo Shimizu and Yuki Yamada 2015, "Free will and the divergence problem", Annals of the Japan Association for Philosophy of Science, Vol.23, The Japan Association for Philosophy of Science. 論文1では、可能性の論理的様相に対する時間分岐的様相の先行性が主張されるが、この試みはD. ScotusからAristotleへの意味論上の回帰として理解することができる。同論文ではこの試みを通じて、S. Kripkeのde re 様相に関する議論をWittgensteinの知識論に接合する。なお、同論文の掲載誌は、哲学研究の分野において国内を代表する学会誌であり、さらに同論文の内容は日本哲学会第73回大会シンポジウムでの招待講演でも発表されている。 論文2では、時間分岐的様相と自由意志・責任帰属との関係が多角的に論じられており、その分析はB. Libetらの心理学実験にも及ぶ。共著者のうち、清水氏は新学術研究領域「こころの時間学」公募班の連携研究者であり、山田氏は他の公募班(代表:宮崎真教授)の連携研究者である。なお、同論文の掲載誌は科学基礎論学会発行の欧文誌であり、同論文掲載号には、海外の著名な研究者による論文も掲載されている。 このほか平成26年度には、複数の学術発表や一般向けの文章の寄稿などを通して、本研究課題の成果の一部を、哲学研究者以外の方々にも発信した。
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