研究実績の概要 |
機能的磁気共鳴画像 (fMRI) による研究では,触覚刺激の同時性判断および時間順序判断を行っている被験者の脳活動データから,同時性判断に特有の関連脳部位として後島皮質を特定した.従来の理論モデルは,同時性判断と時間順序判断のための処理が独立に行われていることを仮定した「並列モデル」 と,同時性判断のモジュールが時間順序判断のモジュールに含まれることを仮定した「全体-部分関係モデル」の二つに分類されるが,近年の心理物理学的研究からは後者が支持されつつあった.しかし,本結果は,後者のみでは実際の脳の情報処理は説明がつかず,二つのモデルを組み合わせたハイブリッドモデルを想定する必要があることを示唆した (Miyazaki et al. 投稿中). さらに,視聴覚刺激の時間順序判断と同時性判断を行っている被験者の脳活動測定を実施した.その結果,時間順序判断に特有の脳活動が運動前野,後頭頂野といった複数の領域に検出された一方で,同時性判断に特有の関連脳部位は検出されなかった.つまり,触覚モダリティでは,上述のようにハイブリッドモデルが想定される一方で,視聴覚のマルチモダリティでは,全体-部分関係モデルで実際の脳の情報処理を説明できることが示唆された (Matsuzaki et al. 2014, Int J Psychophysiol). 経頭蓋磁気刺激 (TMS)による研究では,時間順序判断を遂行中の被験者を対象に関連脳部位候補の機能阻害実験を行った結果,事前経験に従った主観的同時点の較正に,右の背側運動前野が関与していることが示された (Takeuchi et al. 2014, Int J Psychophysiol). また,連携研究者の山田祐樹氏らともに,Postdiction とPrediction の相互作用に関する諸研究の論考を報告するなどの活動も展開した (e.g., Yamada et al. 2015, Front Psychol).
<連携研究者>山田祐樹 (九大),門田宏 (高知工科大),竹内成生 (上武大),関口浩文 (上武大),河内山隆紀 (ATR)
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