研究領域 | こころの時間学 ―現在・過去・未来の起源を求めて― |
研究課題/領域番号 |
26119523
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
時本 真吾 目白大学, 外国語学部, 教授 (00291849)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 事象時刻 / 基準時刻 / 事象関連電位 / 事象関連スペクトル摂動 |
研究実績の概要 |
本研究は,ヒト言語では発話時刻とは異なる時刻の出来事を伝達できること,また,現在とは異なる時刻に自身の立場を置いて発話が可能なことに着目し,言語刺激の操作によって「事象時刻(event time)」と「基準時刻(reference time)」を要因とした脳波計測実験を行い,時間の脳内地図構築に寄与することを意図したものである。今年度は(1)に例示する日本語文を視覚呈示し,「{この/その/あの}日を」位置における脳波を記録した。脳波記録について,事象関連電位(ERP)と事象関連スペクトル摂動(ERSP)を解析し,事象時刻と基準時刻の効果を考察した。 (1) {先週金曜/今日/来週金曜}は息子の入学式{だった/だ/だ}。 {この/その/あの}日を,私は待ち望んで{いた/いた/いる}。 ERP解析の結果,基準時刻の効果は,中央部から前頭部(やや左)にかけて現れた。但し,中央部のERP成分について,現在と過去で周波数成分は異なっていた。また,ERSPにおいて,基準時刻はシータ・アルファ・高ガンマ帯域でコード化されている可能性が示された。ERPにおいて,基準時刻(この日/その日)の対比は,現在について最も顕著で,この傾向は行動反応と対応している。また,過去の方が未来よりもERP分布が広いことは,自然言語の時間表現の体系とある程度対応している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
言語材料によって,事象時刻と基準時刻の神経活動を検討した研究は例が無く,日本語文の呈示によってERP, ERSPに二時刻の効果が確認できたことは評価できると考えている。但し,実験の設計並びに解析手法には改善の余地があることも自覚している。
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今後の研究の推進方策 |
文の正誤判断においては、「あの日」に最も顕著な傾向があるが、「あの日」のERP分布は「その日」とはかなり違っていて、むしろ「この日」に近い。このことは事象時刻と基準時刻の脳内表現に交互作用があることを示唆している。第2年度は,実験の設計を改善すると共に、ER(S)P に加え、Phase-locking valueで電極・領域間のconnectivityを検討する予定である。
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