研究領域 | こころの時間学 ―現在・過去・未来の起源を求めて― |
研究課題/領域番号 |
26119525
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
川畑 秀明 慶應義塾大学, 文学部, 准教授 (70347079)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 実験美学 / 時間認知 / 美しさ / 顔魅力 |
研究実績の概要 |
絵画や写真は情景のなかに刻々と流れる一瞬を切り取った表現である一方,それらの表現が時間の感じ方に影響を与えることがある。楽しい時間は短く感じられ退屈な時間は長く感じられるように,情動や快は時間の感じ方に影響することはこれまで知られてきたが,芸術作品に感じる美や魅力がどのように時間の感じ方に影響を与えるかについてはよく分かっていない。しかし,近年,対象に感じる美や魅力の認知が時間知覚を変化させたり,その後の注意過程に影響を与えたりすることが示唆されている。本課題では,実験美学的手法により,刺激に対する美や魅力の評価が感じられる時間にどのように影響するかについて検討することで,作品を鑑賞するのに要する心理的時間と,芸術作品に固有の内在的時間の特徴を明らかにする。 26年度は脳刺激法による美的評価変容の時間的持ち越し効果について,顔魅力が及ぼす注意過程や意識化過程の時間特性について,さらに美や魅力が時間認知そのものに与える影響について検討した。まず絵画画像に感じられる美しさの程度が時間認知に与える影響については,時間再生課題や時間的二分法課題を用いて検討し,美しさが時間認知に与える影響は比較的長い時間に限定的でありながらも存在することが分かった。しかし,文脈の効果など芸術素材に含まれるコンテンツベースでの分析までは至っておらず,今後の検討課題である。また,顔魅力認知が注意過程や意識過程に与える影響については,高速継時刺激提示(RSVP)や両眼視野闘争課題を用いて検討した。魅力のある顔が意識に比較的長く止まることなど注意特性や潜在認知過程について検討し,恋人画像の認知が時間認知に与える影響についても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
絵画画像の画像統計学的研究については仮説に見合った結果を得ることができなかったが,絵画画像を用いた心理実験や顔魅力を用いた実験はたくさんの実験を実施することができ,充実した研究知見を得ることができつつある。
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今後の研究の推進方策 |
顔魅力が時間認知や注意の時間特性に与える影響を検討することについては,既に十分な知見を得ることができたため,27年度はそれらを論文として投稿し,論文とすることを急務としたい。絵画画像に感じられる美しさについては,時間認知に与える影響は限定的でありながらも,様々な観点から実験を行ってきたため,それらについても論文化を急ぐ予定である。27年度は26年度に行ってきた研究を継続しながらも,絵画鑑賞における評価の馴化過程について検討することで,時間が経過することによって変化する評価という,これまでの時間認知研究とは逆の論理での研究を行う予定である。
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