ラットの大脳皮質や基底核の回路がどのように運動指令を生成し、行動タイミングを計るのかについては、いまだに大きな謎に包まれている。研究代表者は、前肢を使うオペラント学習課題にマルチニューロン記録法や傍細胞(ジャクスタセルラー)記録法を組み合わせて、ラットの自発性運動の発現を担う大脳皮質(一次運動野)と大脳基底核(背外側線条体)の回路機構に関する行動・生理学的研究を推進してきた。本研究では、ラットが自発性運動を発現するために行動タイミングを計る大脳皮質と基底核の多領域間回路の情報伝達を、独自の行動・生理学的手法と光遺伝学的手法を駆使して解明し、小動物の「こころの時間」の神経基盤に迫ることを目指した。 本年度は、行動タイミング課題を遂行しているラットの大脳皮質や大脳基底核における神経活動をマルチニューロン記録する行動・生理実験を開始した。まずラットを馴化した後、イソフルラン吸入麻酔下で頭部固定具と接地・参照電極を頭部に取り付ける手術をおこなった。手術回復後、飲水制限を課し、多個体行動課題訓練装置を活用して、頭部固定下で前肢を使ってレバーを操作するオペラント学習課題の訓練を施した。学習効率を大幅に向上させるために、レバーとスパウト(報酬飲み口)が一体化した「スパウトレバー」を採用した。この訓練装置をもちいると、ラットは右前肢でレバーを押し切って、一定時間(1秒間など)保持後に自発的にレバーを引いて報酬を獲得することを学習した。このような学習行動の実験を計3頭のラットをもちいて実施した。 本研究は、他研究課題(科研費新学術領域研究計画研究)の新規開始に伴い、本年度途中で廃止することとなった。
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