本研究の目的は、時間と空間の共感覚がポジティブな期待を生成する可能性と、その脳内機構を明らかにすることである。当該年度は、1)前年度開発した時間の空間配置についての行動実験を完了した。さらに、2)前年度開発したオプティカルフローを用いた未来思考についての行動実験をfMRI計測中に実施した。 1)時間の空間内配置についての検討 時間の空間配置について検討するために、前年度開発した、上下方向の数量配置についての行動実験を実施した。結果、数量の小(≒過去)が上、大 (≒未来)が下に配置されていることを見出した。このことから、時間の上下方向の空間配置は、 縦書きの書字・読字方向の影響受けて、上から下へ流れている可能性が示唆された。 2)未来思考と進行方向についての検討 fMRIを用いて、オプティカルフローにより生じる脳活動領域(背外側前頭前野、内側前頭前野、 前頭極、下頭頂葉)が、ポジティブな未来予測を高めることを、健常者(10 名)において見出した。空間移動に関わる脳機能領域が時間移動(未来思考)にも関与している可能性が示唆された。 これらの研究から、時間と空間が心的に重複している様子を行動実験で示すことができ、さらに、脳内においてその重複現象の一端を見出すことに成功した。
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