研究領域 | こころの時間学 ―現在・過去・未来の起源を求めて― |
研究課題/領域番号 |
26119534
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
山本 慎也 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 主任研究員 (90371088)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 認知科学 / 神経科学 / 時間知覚 / 情報統合 |
研究実績の概要 |
脳は2つの感覚信号の時間情報をどのように処理しているのだろうか?100ms程度の小さな時間差の2つの信号の時間的関係を考えるとき、「どちらが先かで、どちらが後か?」という時間順序の問題と、「同時か、非同時か?」という同時性の問題が存在する。これまで、「時間順序と同時性は、同じ神経基盤で行われているのかどうか?」という議論が続いてきたが、いまだ未知の問題のままであった。一方、最近の研究で、時間知覚は過去の経験に依存して変化することが分かってきた(時間知覚適応)。その様式には、「過去に頻繁におこった順序を無視するような変化(ラグ・アダプテーション)」と「過去に頻繁に起こった順序と感じやすくなるような変化(ベイズ較正)」という少なくとも2種類が存在する。我々は、同時性判断と時間順序判断において、時間知覚適応の挙動が相同なのかどうかの検証を試みた。触覚-触覚、触覚-聴覚の組み合わせで、同時性判断および時間順序判断の実験を行ったところ、ラグアダプテーションは同時性判断および時間順序判断の両方で観察されるが、ベイズ較正は時間順序判断のみで観察された。このことは、同時性判断と時間順序判断が、別のプロセスを経ている可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主たる問題意識は「時間順序判断と同時性判断は、同じ神経基盤で行われているのか?」というものであるが、時間知覚の適応の観点から、両者の乖離する現象を発見することができた。このことは、時間知覚の神経基盤の解明への大きな糸口となりうる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の目標は、時間順序判断と同時性判断の神経基盤の解明である。平成26年度には、ヒトを用いた研究によって両者の乖離する現象を発見することができた。平成27年度は、ヒトを用いた研究を行動学的・数理科学的に発展させると同時に、動物を用いた研究によって、神経基盤の解明へと掘り下げる。
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