前年度に引き続き、哺乳動物細胞内にトグルスイッチ回路を構築することを試みた。まず、幹細胞を含めた多様な細胞種で動作する転写抑制スイッチを開発した。具体的には、hEF1aプロモーター内にLacオペレータ、Tetオペレータを挿入した新規の転写抑制因子応答型EFプロモーターを作製した。その結果、Lacオペレータ及びTetオペレータを含んだ改変型EFプロモーターについて、それぞれ、転写抑制因子LacI及び転写抑制因子TetRによる応答活性を確認することが出来た。また、転写抑制因子LacI及びTetRと蛍光タンパク質(GFPとRFP)との融合タンパク質を作製し、それらが機能的であることを確認した。そこで、これらの抑制因子と改変型EFプロモーターを使って相互抑制型遺伝子回路を作製し、細胞内に遺伝子導入した。その際、Tol2トランスポゾンを使って染色体ゲノムに組み込むことで安定発現株を樹立し、DoxとIPTGの両方を添加した条件下で培養を行い、GFPとRFPの両方が陽性な細胞群を純化した。その後、DoxとIPTGの両方を除いた条件で培養を継続し、再びFACS解析を行ったところ、GFP+/RFP-細胞集団とGFP-/RFP+細胞集団の両方が現れたことから、トグルスイッチ機能が働いていることが示唆された。今後、このトグルスイッチ回路に光応答機能を付与することによって、本研究が目標とする光応答性トグルスイッチ回路の構築を目指す。
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