H27年度は,計画班花井准教授(九州大学)と共同で,分裂する大腸菌の追跡および追跡結果を利用した大腸菌のタンパク質生成のオシレーションについて解析を行った.前者については,度重なるミーティングを実施し,撮影条件および追跡精度の妥協点を見出す努力を最大限に図った.特に撮影条件については,顕微鏡のフォーカスやコントラスト,さらには大腸菌を生育するためのMEMSの構造および流速についても細かな調整を行った.その結果,極めて鮮明な映像ができ,さらにそれにより追跡の前段階である個々の大腸菌の検出が極めて高精度にできるようになった.さらにそれを受けて,検出結果を時間的につなぐ処理,すなわち追跡処理についても精度が格段に向上した.なおこの追跡処理については,最適化法の一種である安定結婚アルゴリズムを利用した.また,そのままでは分裂による対象数の増減に対応できないために,後処理により分裂状況を同定し,その付近での追跡経路を補正した.こうして得た追跡経路について,同時に撮影したタンパク質発現量の蛍光観察画像の輝度値の時間変化を見ることで,大腸菌のタンパク質生成量の時間変化を自動観察することに成功した.なおこの課題に関連して,細胞内中心体やマウスおよびメダカの追跡についても実施した.いずれの追跡課題も,対象の挙動や撮影状況が異なるために,それに適した個別のアルゴリズムを実装する必要があり,従ってバイオイメージインフォマティクスにはテイラーメイド型の開発が必要であることを実証した.
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