研究領域 | 動的・多要素な生体分子ネットワークを理解するための合成生物学の基盤構築 |
研究課題/領域番号 |
26119719
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
古澤 力 独立行政法人理化学研究所, 生命システム研究センター, チームリーダー (00372631)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 代謝システム / 計算機シミュレーション / 安定性 |
研究実績の概要 |
代謝のダイナミクスは、環境条件に応じて柔軟に変化することが可能である。例えば大腸菌では、環境条件に応じて代謝を変化させ、その増殖速度を100倍といったスケールで変化させることが可能である 。また、栄養源の変化や環境ストレスの付加に対しても、代謝のダイナミクスは柔軟に変化し、その環境に適応することが可能である。では、どのような制御によって、代謝のダイナミクスは安定に、様々な環境に適応することが可能であろうか? 近年の分子生物学の発展は、様々なフィードバック制御に代表される、多様な代謝制御の存在を明らかにしている。しかしそうした制御を積み上げることによって、実際の細胞が持つ柔軟な代謝状態の変化を記述できるかと問われると、現状ではそれは難しい。実際に、代謝のダイナミクスを連立微分方程式によってモデル化した場合、安定に増殖をする解をもたらすパラメータを見つけるだけでも、細かい制御機構やパラメータの調整を必要とする。むろん、精巧な代謝反応の制御がその安定性の維持を担っていると考えられるが、その制御機構がどのような性質を持つ必要があるか、明らかになったとは言い難い。 そこで本研究では、代謝ダイナミクスの安定性の解析を軸として、代謝システムの可塑性の理解を目指す。これまでに、数十の反応を持ち中央解糖系、ペントースリン酸経路、TAC回路などを含む微分方程式による代謝モデルの構築を行っている。今後は、代謝ダイナミクスが安定であるために必要な代謝ネットワークの構造や、制御機構の存在様式を抽出し、既知の代謝ネットワークに関する情報と対比させることにより、そこでの一般的な性質を探求する。こうした解析により、合成生物学的アプローチによる代謝改変に向けて、どのような代謝システムへの摂動が可能で、どのような摂動がシステムの不安定化をもたらすかを予言し、検証可能な実験システムの提案を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度までに、数十の自由度を持ち、解糖系・ペントースリン酸経路、TCA回路を含む微分方程式による代謝モデルの構築が完了している。また、この系のパラメータ依存性など基本的な振る舞いの解析も進んでおり、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に開発した代謝システムの微分方程式モデルを用いて、細胞増殖を可能とする定常状態がどのようなパラメータ領域で安定性を持つか解析する。また、適当な発現制御のダイナミクスをモデルに導入することにより、どのような制御によって代謝システムの安定性が実現可能であるかの理解を目指す。
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