公募研究
本研究では、近年発展目覚ましい極低温走査トンネル顕微鏡(STM)を用いた物性物理学の研究の中にあって、一際脚光を浴びている測定手法である、表面ナノ磁性体に対するスピン偏極STMと高温超伝導体等に対する準粒子干渉実験に対して、スパースモデリングによる解析手法を適用する。一つ目の課題として、第一原理的な理論計算に頼らない、データ駆動型のスピン偏極STM画像解析手法を確立し、ナノ磁性体の相互作用パラメーターの抽出を行う。二つの目の課題は、準粒子干渉の基本である金属表面等の電子定在波(量子力学に基づいた電子の波としての性質から、表面の欠陥等により散乱・干渉することによって現れる)を極低温STMで観察し、画像ノイズによりそのフーリエ変換像に現れる非本質的な波の成分を落とし、干渉パターンの高分解能化を行う。さらに、この解析から干渉パターンを得るために必要なSTM画像のデータ量を逆算し、測定時間の大幅な改善を目指す。初年度は、応募者がこれまで研究を続けて来たタングステン基板上のマンガン薄膜のスピン偏極STM実験を行い、得られたSTM画像に対して、ベイズ推定によるモデル選択を行うことを通して、新たに相互作用パラメーターの抽出を行いことであった。現在までに、スピン偏極STMの実験の確立に成功しており、ベイズ推定に適応するためのより質の高い画像データを得るための実験を進めている。
3: やや遅れている
スピン偏極STMの実験手法の確立に多くの時間を要したために、ベイズ推定を用いた画像解析まで至らなかった。
今後は、Markov Random Fieldモデルを用いて、パラメータ(温度、磁場)の異なるスピン偏極STM画像から、スピン構造の抽出を行い、その後の相互作用パラメータの抽出の土台としたい。一方、準粒子干渉の高精度化、高速化に関しては、様々なダウンサンプリングからフーリエ変換を行い、より少ないサンプリングデータから、データの多い画像と同じようなフーリエ変換像を得るための手法を検証及び評価する。まずは、人工的なデータから試し、次に実験的に得られた金属表面での定在波の高密度・高解像度データを用いて上述の手法を試す。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (20件) (うち招待講演 4件)
表面科学
巻: 未定 ページ: 未定
The Journal of Chemical Physics
巻: 141 ページ: 114701, 1-8
10.1063/1.4894439
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 83 ページ: 54716, 1-6
http://dx.doi.org/10.7566/JPSJ.83.054716