研究領域 | スパースモデリングの深化と高次元データ駆動科学の創成 |
研究課題/領域番号 |
26120510
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長尾 大道 東京大学, 地震研究所, 准教授 (80435833)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | データ同化 / 疎性モデリング / lasso / データ駆動型モデリング / ベイズ統計学 / 逐次ベイズフィルタ / 地震動イメージング / 次元圧縮 |
研究実績の概要 |
数値シミュレーションと観測・実験データを統融合するための計算技術であるデータ同化では、シミュレーションモデルを事前に与える必要があるが、例えば台風や地震の発生あるいは火山噴火といった非線形性の強いイベントのような、物理モデルを予め与えることが極めて困難な現象が起こった場合には、ある確率密度関数に従うシステムノイズおよび観測ノイズにその情報が含まれることになる。本研究では、この情報を疎性モデリングによって抽出する機能を有するデータ同化の手法を開発する。これによって、所与のシミュレーションモデルに大きく依存する演繹的な手法であった従来のデータ同化は、帰納的なデータ駆動型モデリングの要素も同時に持ち合わせることになり、データ同化の応用範囲が、観測・実験データからの経験的モデルを構築することが主流の他分野へも大きく広がっていくことが期待される。 平成26年度は、将来的にデータ同化の枠組みに組み込むことを念頭に、疎性モデリングに基づくデータ駆動型モデリング機能の開発を開始した。本研究では、シミュレーションモデルを与えることが不可能な例として、地震観測データから任意の地点における地震動を推定する「地震動イメージング法」に焦点を当て、lassoに基づく手法を開発した。本手法を2011年東北地方太平洋沖地震時に首都圏地震観測網で得られた地震データに適用したところ、首都圏における詳細な地震動を得ることに成功した。開発したアルゴリズムは、研究協力者の協力を得ながら、並列計算機上に実装を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の当初計画では、まずは疎性モデリングによるデータ駆動型モデリングの手法を開発し、データ同化の枠組みにプラグインした後、様々な実問題へ適用し、その性能を検証する予定であった。しかしながら、予想外に早く首都圏地震観測網のデータが手に入ることとなったため、研究の進捗速度を速めるためにも、先に実問題に適したデータ駆動型モデリングの手法を開発することにした。すなわち、平成27年度に実施予定であった応用研究計画の一部を、平成26年度に前倒して実施し、平成26年度に実施予定であった手法開発の一部を、平成27年度に実施することとした。研究の順序の入れ替えはあったものの、総じて見れば、本研究は全体的に順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度開発したlassoに基づくデータ駆動型モデリング手法を、データ同化の枠組みに取り込むためのアルゴリズムを開発する。まずは状態の次元を固定したままデータ同化を実施する場合から始め、次に状態の次元圧縮による本質的な量の抽出や、さらにはモデルの更新を期待されている場合への発展と、逐次ベイズフィルタを段階的に開発していく。今年度実施した地震動イメージングについては、地震動の数値シミュレーションモデルと首都圏直下地震観測網の観測データに対してデータ同化を実施し、疎性モデリングによる都市部の各建造物における地震動開始時刻や、さらには地震動波形の推定の高度化を目指す。また、観測データの次元間の相関の大きさを利用した状態の次元圧縮や、さらにはシミュレーションモデルの更新を行うためのアルゴリズム開発を行う。また、開発した手法をデータ同化ライブラリとしてまとめて公開することにより、これまでは観測・実験データからの帰納的モデリングが主流であった分野へデータ同化を普及させることを狙う。
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