研究領域 | スパースモデリングの深化と高次元データ駆動科学の創成 |
研究課題/領域番号 |
26120514
|
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
宮脇 陽一 電気通信大学, その他部局等, 准教授 (80373372)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 脳・神経 / 認知科学 / スパースモデリング / 脳機能計測 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本年度は、多様な物体画像が「いつ」脳活動に表現されるのかをスパースモデリングを用いて定量化することを目指して研究を行った。この目標達成のため、以下の項目を順次実施した。 1.階層的大規模画像データベースを用いた実験設計:階層的画像データベースであるImageNetを用いて提示画像を選定した。画像データベースの階層構造を参照することで、効率的に多数の物体カテゴリ画像に対する脳活動解析を可能にすることができた。 2.脳磁場信号からの皮質上神経電流分布の推定:選定した画像セットに対する脳活動を、全頭型高密度脳磁場計測装置で計測した。並行して機能的磁気共鳴画像計測実験を行い、低次視覚皮質、背側/腹側高次視覚皮質の位置を同定した。同定した各視覚皮質の位置情報を事前分布として用い、ベイズ統計の方法によって脳磁場信号に対応する皮質上神経電流分布を推定した。この方法により、関心のある脳部位を限定しつつ、そこでの神経電流分布パターンの時間変化をミリ秒のオーダーで解析した。 3.皮質上神経電流分布からの物体カテゴリ情報の時間分解予測:推定した神経電流強度分布を入力特徴量として用い、提示された物体カテゴリを予測する統計モデルを機械学習した。物体カテゴリの情報が神経活動に表現された時刻は、モデルの予測成績が有意となる時刻で定義した。この方法により、物体カテゴリ情報の表現タイミングを同定した。神経電流分布から計算された特徴量の組み合わせは高次元となるので、モデルの学習にはスパースモデリングの手法を用いた。これにより、モデルの汎化性能を向上させつつ、物体カテゴリを表現するのに重要な神経電流分布の特徴量の自動選択を試みた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の当初目的として、1.階層的大規模画像データベースを用いた実験設計、2.脳磁場信号からの皮質上神経電流分布の推定、3.皮質上神経電流分布からの物体カテゴリ情報の時間分解予測、の三つの具体的課題を挙げた。これら全ての項目について取り組むことができ、いずれにおいても肯定的な進捗が得られている。ただし、初年度は解析方法の原理確認に重点をおいたため、物体カテゴリ数がまだ十分でない。また脳磁場信号からの皮質上神経電流分布推定の精度保証が厳密な意味で行えていないという課題が残されている。以上、実績と課題の観点において、「(2)おおむね順調に進展している」の評価が妥当と考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、多様な物体画像が「いつ」脳活動に表現されるのかをスパースモデリングを用いて定量化する手法についての研究をさらにおしすすめつつ、画像特徴量と物体カテゴリ表現ダイナミクスの関係性の検証を開始する。この目標達成のため、以下の項目を実施する。 1.物体カテゴリ数を大規模化した脳磁場計測実験:これまでは原理確認に重点をおき、物体カテゴリ数をあえて少なくし、かわりに物体カテゴリあたりの提示画像数を多くした。昨年度の予備解析により、同程度の精度を維持するためのおおよそのサンプル数が見積もれているので、本年度はその分カテゴリ数を増加させた脳磁場計測実験を行う。 2.皮質上神経電流分布推定の精度評価:皮質上神経電流分布推定結果の精度評価を行うため、人工データを用いた解析を行う。これにより、物体カテゴリの脳内表現ダイナミクスを実効的にどのくらいの時空間分解能で解析できているかを厳密に評価することができると期待される。 3.物体カテゴリ画像特徴量の定量化:各物体カテゴリ画像を画像特徴量で表現する。既存の特徴量記述子に加え、画像データ自身から最適な特徴量記述子を抽出する潜在変数モデリングも試みる。 4.物体カテゴリ表現ダイナミクスと画像特徴量の関係性の検証:各物体カテゴリが脳活動に表現されるタイミングと、画像特徴量との間の統計的な関係性を検証する。
|