平成27年度はびまん性肺疾患に対する Deep Convolutional Neural Network (DCNN) の構築を行った.DCNN はディープラーニングと呼ばれるニューラルネットワーク手法であり,画像識別タスクに対するデファクトスタンダードになりつつある.DCNNの学習は,多数の画像を学習データに用いる必要があるが,本研究で提案するような医用画像はデータの収集が困難である.DCNNは脳の視覚モデルを念頭においたネットワークアーキテクチャを持つ.我々人間は新奇なパターンを学習するのにそれほど多くの学習データを必要とするわけではなく,比較的少数なデータで学習することが可能である.これは脳が幼少時において自然画像を用いて十分に学習されるからであると考えられる.そこで,ここでは DCNN を自然画像で学習させ,学習パラメータを十分形成させた後,びまん性肺疾患画像を学習させる手法をとった.その結果として,提案手法の識別結果は,びまん性肺疾患画像のみを学習させたDCNNよりも識別性能の向上が確認された.さらにDCNNの特徴抽出層がどのような表現になっているかを確認するために,DCNN の中間層の各階層に識別器を設け,識別平面に対して,テストデータがどのような表現になっているのかを確認した.学習データが少ないびまん性肺疾患画像のみで学習させたDCNNは,データを表現するクラスタが十分に小さくならず,データの変形に対する不偏性が十分に獲得できないことが示唆できた.以上の実験結果により自然画像を学習する手法は,学習データが少ないような対象に対する学習手法として有効であることがわかってきた.
|