研究領域 | スパースモデリングの深化と高次元データ駆動科学の創成 |
研究課題/領域番号 |
26120522
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
笈田 武範 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70447910)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 疎性モデリング / 圧縮センシング / 超低磁場MRI / 経験的モード分解 / カルーネンレーベ変換 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,超低磁場MRIの生体応用に向けた高速撮像法の実現を目指しており,超低磁場MRIデータのスパースモデル構築および圧縮センシングを用いた超低磁場MRI計測の時空間分解能の向上および高速化を進めている. 初年度にあたる平成26年度は,経験的モード分解を用いたスパースモデルの構築を進めていたが,圧縮センシングを用いた超低磁場MRI計測の時空間分解能の向上および高速化におけるサンプリング戦略とモデリングの間には密接な関係があることが確認され,平成27年度に予定していた圧縮センシングを用いた位相エンコード数およびサンプリング時間抑制と並行して研究を進めることとした. 特に,本年度は一般的な高磁場MRIでは問題にはならない圧縮センシングを用いたサンプリング時間抑制について重点的に検討を行った.超低磁場MRIのように低周波数領域においてフーリエイメージングに基づくMRIを実現する場合,計測信号帯域を広く使えず,空間分解能向上に数百msを超えるような長いサンプリング時間が必要になる.これは,計測時間延長の要因になるばかりでなく,信号対雑音比の低下の原因となり,時空間分解能の低下を招く.本研究課題では,サンプリング時間抑制のために圧縮センシングを用いる手法を提案し,その有効性を示した. さらに,同じような周波数帯のMR信号計測を行うMRスペクトロスコピーへの上記手法の応用が可能かミオイノシトールファントムを用いた計測を行い,その有効性を検討した. 一方,スパースモデルの構築に関しては,2次元の経験的モード分解およびカルーネンレーベ変換の有効性を検討するため,それぞれの変換ツールを作成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の計画の経験的モード分解を用いたスパースモデルの構築に関しては,変換ツールの作成までは順調に進行したが,最終的な目的である超低磁場MRIにおけるスパースモデルおよび圧縮センシングを用いた時空間分解能の向上および高速撮像法について検討を進める中で,平成27年度実施予定のサンプリング戦略と構築したスパースモデルの有効性の間に密接な関係があることが確認された.そのため,モデル構築と並行してサンプリング戦略についても前倒しで検討を開始した.このため,平成26年度計画していたモデル構築に関してはやや遅れが生じているが,平成27年度の計画であったサンプリング戦略に関しては,順調に進行しており,サンプリング時間抑制に関して有益な知見も得られている.以上より,実施計画に対しておおむね順調に進展していると自己評価している.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の実施計画では,圧縮センシングを用いた位相エンコードおよびサンプリング時間の抑制を実施する予定であったが,サンプリング時間の抑制に関しては,本年度有益な知見が得られていることから,知見に即したサンプリング戦略に最適化したスパースモデルの構築を実施することにより,実施計画をさらに推進する. また,平成26年度完成予定であった経験的モード分解を用いたスパースモデルだけではなく,一般画像や映像のデータ圧縮などに用いられるカルーネンレーベ変換なども本課題に応用できないか検討を進める.このとき,計算量の増大に伴う影響を抑制するため,平成26年度に導入したワークステーションおよびソフトウェアを活用することにより,計算時間の増大を抑制する. さらに,圧縮センシングを用いた位相エンコード数抑制についても検討を進める.フーリエイメージングを用いるMRI では,繰り返し時間,位相エンコード数,励起回数などによって,撮像時間が決定する.したがって,平成27年度には,上記の中から分解能にも関わる位相エンコード数の抑制による計測時間の短縮について明らかにする.このとき,平成26年度に知見を得たサンプリング時間抑制と統合することによって,超低磁場MRIデータのスパースモデル構築および圧縮センシングを用いた超低磁場MRI計測の時空間分解能の向上および高速化の実現を目指す. これらの手法は,超低磁場MRIを対象とした研究となるが,平成26年度も実施したように同程度の周波数帯の信号を計測する様々な計測への応用が可能であると考えられる.したがって,平成26年度にも実施したMRスペクトロスコピーへの応用も含め,さらなる応用例についても模索する.
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