本研究課題では,超低磁場MRIの高速化を阻害する要因を解析し,対策を講じた高速撮像パルスシーケンスを構築することにより超低磁場MRIの生体応用に向けた高速撮像法の実現を目指し,圧縮センシングを用いたMR信号取得の高速化を進めてきた. 平成26年度に引き続き,Hzオーダーの高い周波数分解能を必要とするMR信号計測において数百msを超える長いサンプリング時間が要求されるという課題に対応する手法について検討を進めた.まず,ミオイノシトールファントムを用いたMR spectroscopy計測から時間的に等間隔なサンプリングを62.5~75%程度に間引くことがスペクトル再構成精度向上に有効であることを確認した.また,ランダムアンダーサンプリングにより取得データ点数が減少することを抑制するために,高いサンプリングレートを用いる手法についても検討を行い,再構成すべきスペクトルの数や分解能とサンプリング時間の関係によっては,高サンプリングレートの使用が有効な場合がある事も確認され,公表も行った. 次に,超低磁場MRI計測の高速化,特にT1強調画像時のサンプリング戦略について検討を行った.T1強調画像は,短い繰り返し時間での計測が必須となるパルスシーケンスであるが,長いサンプリング時間が繰り返し時間短縮の妨げとなり,T1強調コントラスト低下の要因となる.したがって,超低磁場MRIにおいて高コントラストのT1強調画像を取得するためには,サンプリング時間の短縮が必要となるが,本研究では圧縮センシングを用いてこのサンプリング時間短縮を実現することを検討した.その結果,計測データの圧縮率を一定とした場合,高磁場では一般的な信号読み出しをフルサンプルする手法よりもサンプル数低減する手法の法が画像再構成向上に有効であることを確認した.したがって,圧縮センシングを用いたサンプリング時間短縮が可能であることが確認されたので,その有効性を公表した.
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