研究領域 | スパースモデリングの深化と高次元データ駆動科学の創成 |
研究課題/領域番号 |
26120533
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
松永 康佑 独立行政法人理化学研究所, 計算科学研究機構, 研究員 (60464525)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | FRET計測 / タンパク質 / 状態遷移 / データ同化 / ベイズ推定 |
研究実績の概要 |
本研究は、単分子レベルのタンパク質の構造揺らぎを直接観測する1分子FRET計測で得られる光子計数データから、タンパク質構造情報を含んだ状態遷移モデリングを行うことを目的とする。そのために、タンパク質シミュレーションモデルの構造空間をパスサンプリング法等を用いて効率よくサンプリングして事前分布を生成し、1分子FRET光子計数データを用いて事後分布を求める。今年度は、(1) 粗視化タンパク質モデル・蛍光色素とリンカー部のシミュレーションモデル構築を行い、 (2) 光子統計を考慮した蛍光色素配置と光子計数データとの尤度関数の定式化を行って、分子動力学シミュレーションプログラムへ組み込んだ。(3) 最終的にそれらを用いて模擬1分子FRET光子計数データ用いてテスト計算を行った。まず蛍光色素とリンカーを付加した粗視化Polyproline-20モデルの分子動力学シミュレーションを行って、そこからポアソン過程をエミュレートして模擬1分子FRET光子計数データを作成した。そして、その光子計数データを用いて、モデリング計算を行い構造変数が正しく推定できるかを調べた。その結果、ランダムなリンカー揺らぎに起因するノイズ成分を除去して、Polyproline-20の末端残基間距離ダイナミクス(Polyprolineの異性化に伴い不連続に遷移する)を推定できることを示した。更に、主成分などの他の隠れた構造変数を推定できていることを示した。最後に、意図的にシミュレーションモデルのパラメータを変えて推定を行った。その結果、尤度関数によってある程度、モデルダイナミクスのエラーが修正できることが分かった。以上の結果をまとめて国際誌へ投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
来年度の実データへの応用へ向けた準備は概ね順調に進展している。例えば、粗視化タンパク質モデル・蛍光色素とリンカー結合部のシミュレーションモデル構築は順調に進展した。しかしながら一方で、サンプリング手法であるパスサンプリング法の開発については進捗が遅れている。ただし、これはターゲットとする実データが、当初予定していた「タンパク質構造変化のデータ」から「タンパク質フォールディングのデータ」へと変更されたことが理由である。タンパク質フォールディングでは、アンフォールド状態の構造が無数にあるために、パスサンプリング法の問題設定とは相性が良くない。そこで、現在はレプリカ交換分子動力学法を用いて効率よく複数の構造をサンプリングしている。
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今後の研究の推進方策 |
サンプリング手法であるパスサンプリング法の開発については進捗が遅れているが、これはターゲットとする実データが当初予定していた「タンパク質構造変化のデータ」から「タンパク質フォールディングのデータ」へと変更されたことが理由である。タンパク質フォールディングでは、アンフォールド状態の構造は無数にあるために、パスサンプリング法の問題設定とは相性が良くない。そこで、現在はレプリカ交換分子動力学法を用いてサンプリングを行って、複数の構造を効率よくサンプリングしている。
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