公募研究
スパースモデリングを適用した電波干渉計による高解像度イメージングにより超巨大ブラックホールの直接撮像を、成層圏に気球VLBI局を打ち上げるアプローチでおこなうことを目指した研究である。 本研究期間中は、気球VLBI局プロトタイプ(1号機)の段階である。平成26年度は、試験的フライト実機の観測機能部分についてのおおかたの完成を目指した活動をおこなう予定であった。開発段階でのゴンドラシステムを地上にて懸垂し、気球ーゴンドラ系の力学環境を模擬し、機能確認をおこなうというのが実験のすがたである。具体的には、(1) 姿勢決定センサ群の出力とVLBI観測データを統合処理する局位置決定システムの動作、(2) 姿勢決定値を基にフィードバック制御をおこなう姿勢制御システムの動作、(3) スパースモデリングを用いた撮像法アルゴリズムとのI/F、について検討・実現する予定であった。これらを実現するための開発項目は:(i). ジャイロ/スタートラッカー/加速時計/傾斜計/GPSコンパス/地磁気計など各コンポ―ネント立ち上げ、それらの出力を統合する位置変動モニタシステム、最終的な位置決定を含んだフリンジサーチアルゴリズム、(ii). ピボット、リアクションホイール等の姿勢制御駆動系の製作と制御アルゴリズムの構築、(iii). 気球VLBI局を含めた観測局配置と各局感度を考慮したイメージングシミュレーション研究、(iv). ゴンドラ構体の設計と製作、であった。今年度の進捗は、(i)(ii)(iv)については開発・実験に成功した。(iii)については、研究に着手した段階である。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度のシステム開発は、(1) 局位置決定システム、(2) 姿勢決定・制御システム、(3) ゴンドラ構体の3つであり、これをシステムとして組み上げて動作実証試験をおこなうことが予定であった。 しかし実際には、それ以上のレベルまで到達した。 VLBI干渉計観測に必要なシステムをほぼすべてゴンドラに仮搭載し、吊り下げ状態にて振り子運動をさせながら自律的な姿勢制御をおこない、VLBI観測をおこなった。 実験は、宇宙科学研究所(神奈川県相模原市)の気球VLBI電波望遠鏡ゴンドラシステムと、国立天文台VLBI観測所(岩手県水沢市)の水沢10メートル電波望遠鏡とで同時におこなわれ、400km離れた2つの電波望遠鏡の間で電波干渉に成功した。 これは、地上実験とはいえ、不安定に位置が揺れ続ける観測局でもVLBI観測ができることを世界で初めて示した実験であり、成層圏での気球観測局でのVLBI観測が可能であるという原理の実証となった。 観測システムは、機能としてはほぼ完璧に動作した。
平成27年度は、試験的フライト実機の観測機能部分について耐低温・耐真空環境性能の確認試験を一部実施しながら、電源系・通信系などのバスシステム部分に関する開発もおこない、構成としては最終形態に近い状態まで到達し、観測運用を見据えた検討をおこなう。今年度の開発項目としては: (1) VLBI機器および制御系が含まれた気密容器の熱設計および作り込み、(2) 気密容器システムの熱真空動作試験、(3) 電源システムの設計・製作および熱真空動作試験、(4) 耐振り子振動電波指向システムの開発・地上検証実験、(5) スタートラッカーを用いた5点法電波軸補正運用アルゴリズムの検討と地上検証実験、(6) ゴンドラと気球システムとのインターフェース部の検討・製作、(7) スパースモデリングを利用した超解像イメージング手法の適用シミュレーション検討、を目標とする。
すべて 2015 2014
すべて 学会発表 (12件) (うち招待講演 2件)