研究実績の概要 |
プレートの沈み込みに伴って発生した過去の大地震を解析した結果、余効すべりが起きている間、大地震の震源域はほとんどすべっていない(固着している)ことが知られている。余効すべりとは、大地震後に数カ月~数年間かけて地下の断層がゆっくりすべる現象であり、GPS等によって地表で観測された地殻変動データの逆解析によって、断層面上のすべり量を推定できる。大地震後の余効すべり域と固着域を時空間的により高分解能で分離できれば、地震後のプレート境界面上の応力蓄積・解放過程や強度回復過程の理解を助ける知見となるだけでなく、大きな地震発生の可能性が近づいている場所の推定にもつながる。本研究では、沈み込むプレート境界面上の固着域を、余効すべりに伴う地殻変動データから高分解能で抽出するための新たな評価関数を開発した。 余効すべりに伴う地殻変動を数値シミュレーションで計算し、それを模擬観測データとしてプレート境界面上のすべり分布を推定する数値実験を行った。従来の手法では、観測データに対してモデルパラメタ数が多い問題設定のため、すべり分布のなめらかさを仮定していた。そのため、詳細な構造を高分解能で推定することは難しく、すべり域と固着域の境界が連続的で緩やかに変化していた [Nakata et al., 2014]。 そこで、評価関数にMarkov random fieldsモデルに基づいたすべりのなめらかさ、および不連続性を規定する項と、スパースモデリング (Lasso)に基づいたモデルパラメタのスパース性を規定する項を導入したところ、この評価関数を最小にするモデルパラメタセットは、なめらかさ、またはスパース性のどちらかを規定した場合よりも高分解能で余効すべり域と固着域を分離することができた。この内容について、国内外の学会で発表するとともに、査読付論文が受理された。
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