研究領域 | 予測と意思決定の脳内計算機構の解明による人間理解と応用 |
研究課題/領域番号 |
26120707
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松本 正幸 筑波大学, 医学医療系, 教授 (50577864)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ドーパミンニューロン / 外側手綱核 / 前部帯状皮質 / 学習 |
研究実績の概要 |
報酬を得る・罰を避けるための学習は、動物にとって必須の能力である。この脳の学習メカニズムを解明するために、多くの先行研究が、報酬と罰が持つ「価値」に注目してきた。特に、価値の「予測誤差」をコードするドーパミン神経系を取り入れた強化学習の枠組みは、実験研究と理論研究の両方から大きな支持を得ている。一方、研究代表者らの最近の研究は、ドーパミンニューロンは一様に価値の予測誤差をコードしているわけではなく、その分布域によっては、報酬や罰の「motivational salience(動機付けの顕著性)」をコードしていることを明らかにした。本研究課題では、ドーパミンの価値信号とsalience信号が、報酬を得る・罰を避けるための学習にどのような役割を果たしているのか明らかにすることを目的とする。 H26年度は、特に、価値をコードするドーパミンニューロンと強い結合関係を持つ外側手綱核と前部帯状皮質から神経活動を記録し、それぞれの領域が学習に果たす役割を解析した。外側手綱核のニューロンは嫌悪事象が生じたときに素早く反応し、その検出に有効であることが示された。一方、前部帯状皮質のニューロンは、過去に生じた嫌悪事象の記憶を保持していた。また、嫌悪事象を避けるための行動の切り替えに関わる信号を伝達していることも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに2頭のサルの外側手綱核と前部帯状皮質から神経活動の記録を終え、論文投稿の準備を進めている。この成果は、本研究の大きな目的の一つである「価値をコードするドーパミン神経系が報酬を得る・罰を避けるための学習に果たす役割の解明」につながるものであり、初年度として十分な達成度であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
Salienceをコードする黒質緻密部のドーパミンニューロンに注目し、薬理学的な手法や神経路選択的な光遺伝学の手法によってドーパミンのsalience信号を人為的に操作し、その学習への影響を解析する。最長類実験動物モデルを用いた神経路選択的な光遺伝学の手法については、この手法をサルの眼球運動系に適用し、その有効性をすでに確認済みである。
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