研究実績の概要 |
皮質-線条体結合に関して、皮質か線条体内かという刺激部位の違い(活性化される繊維の組成が異なることが考えられる)により応答の短期可塑性が変わるという実験結果(Ding et al., 2008, J Neurosci 28:6483)から、プレ・ポスト各細胞種間それぞれのシナプス短期可塑性および解剖学的な結合の強さを、数理モデルのフィッティング最適化により推定したところ、既存の解剖学的知見およびCSTD仮説で仮定した伝達の選択性と符合するといえる結果が得られている。そこで、それについて、さらに他の実験結果との整合性を検討し、また、線条体の下流の淡蒼球・黒質におけるシナプスの短期可塑性の影響を考え合わせて、皮質→基底核直接路・間接路のトータルの伝達の強さについて、仮説にどのように組み込んでいくべきか検討を進めた。大脳基底核がいかに価値学習に関わっているかについては、直接路と間接路と呼ばれる二つの主要な経路が、それぞれ、正の結果(報酬)からの学習、および負の結果(罰)からの学習に強く関わっているとする仮説(Go/No-Go学習仮説)が広く知られている。この仮説とCSTD仮説とは、直接路・間接路の動作・機能、ドーパミン依存的神経可塑性などについて大きく異なる。そこで、Go/No-Go学習仮説を支持しうると考えられてきた実験結果が、CSTD仮説によっても説明しうるものであるかどうか、大脳皮質-基底核の神経回路モデルのシミュレーションを行って検討を進めた。さらに、CSTD仮説によって、神経活動のレベルおよび行動のレベルにおいて、どのようなことが予測されるかについても検討を進めた。
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