研究領域 | 予測と意思決定の脳内計算機構の解明による人間理解と応用 |
研究課題/領域番号 |
26120713
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
溝口 博之 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (70402568)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 意思決定 / 覚せい剤 / 島皮質 / DREADD / 報酬予測誤差 |
研究実績の概要 |
精神病患者にみられる意思決定(実行機能など)の障害は生体ホメオスタシスの制御機構の変化 (Science, 2007)、近い将来の快感に関連する扁桃体を含む衝動的神経回路と遠い将来に関係する思慮的な前頭葉皮質回路のアンバランス (Nat Neurosci, 2005) に基づくと提唱されているが、意思決定障害の研究は他の精神異常と比べて明らかに遅れている。それゆえ、この分野の小動物を用いた研究の発展は、意思決定異常時における脳内プロセスの解明に大きな研究成果を残し、さらには、精神疾患患者を対象とした臨床応用研究・治療などの方向性を明確に定めると期待できる。我々は、意思決定を定量的に解析可能なラット用ギャンブルテストを独自に考案するとともに、覚せい剤依存誘発性意思決定障害モデルの作製に成功した。 本研究では、独自に開発した覚せい剤依存誘発性意思決定障害モデルを用いて、①計算理論研究(モデルフリー)に基づくリスク志向性行動の追究、②Designer Receptor Exclusively Activated by Designer Drugs (DREADD) システムを用いた報酬予測誤差情報の統合に関与する脳領域の同定③大脳基底核の直接経路、間接経路の調節と意思決定、について検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DREADDテクノロジーを導入し、島皮質を操作することで、意思決定・選択行動を操作できることを確認したし、さらに、覚せい剤誘発意思決定障害の計算論的手法を用いて、モデル化することができた。順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
意思決定異常に島皮質、線条体と側坐核が関与することを見つけたことから、これら脳領域の活動をDREADDテクノロジーで操作した時の意思決定について検討する予定でいる。特に、島皮質においては、GADおよびCaMKIIプロモーター制御下で、抑制性と興奮性の神経を特異的に操作し、意思決定におけるそれら神経回路の役割について検討する。線条体と側坐核については、サブスタンスP (SP) あるいはエンケファリン(EnK)プロモーター制御下で、ドーパミンD1(直接経路)あるいはD2(間接経路)受容体発現細胞の活性を制御することで、大脳基底核直接経路・間接経路の役割について検討する。また、これにより得られた行動データをモデル化することで、報酬に対する主観的価値を計算する。
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