研究実績の概要 |
パーキンソン病などでは随意運動異常とともに、脳幹中脳のドパミン、アセチルコリン系のモジュレーションによる大脳の集団的な神経活動ダイナミクスに異常が見られる。非侵襲で大脳、脳幹活動を操作し、随意運動を改善させるような効果的な脳刺激法を開発するうえで、ヒトに近いサルで脳幹アセチルコリン系のニューロン集団の単一細胞レベルで、随意運動遂行と神経活動のダイナミクスの関係を明らかにする必要がある。サル脳幹のアセチルコリン性の脚橋被蓋核において、特に随意眼球運動遂行中に、α-βレンジ(8-30Hz)で規則的な単一ニューロン活動が生じることを発見した。 反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)や経頭蓋定電流刺激は、非侵襲的に大脳皮質を局所刺激してその神経活動を促進あるいは抑制する方法で、すでに臨床の場で試用されているが、その作用機序については不明な点が多い。わたしたちはサルを用いて、異なる方法(部位や頻度・強さ)のrTMS,DCSによる脳の活動の変化と、その結果引き起こされる行動・自律神経反応の変化を特定することにより、rTMS,DCSによる脳機能操作法の確立を目指している。 最近特に認知行動課題を遂行しているサルを用いて、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)が中脳ドパミン・脳幹アセチルコリン系の変化を介して注意、意欲・覚醒レベル・学習・意思決定の変容をもたらすメカニズムの解明研究をめざしている。今回得られたサル脳幹アセチルコリン系の単一細胞レベルでの随意運動遂行と神経活動のダイナミクスの変化を、今後適切なrTMSパターンの開発につなげたいと思う。
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