研究実績の概要 |
本課題では運動学習と意思決定の共通原理を解明する。共通の最適化原理でモデル化可能であり、なおかつ共通の脳領域が関わっているため、共通原理の存在が期待できるためである。当該目標を達成するため、本年度は、新たな運動学習のモデルの構築に取り組んだ(Takiyama, Hirashima, Nozaki, 2015, Nature Comm)。新たな要素とは、今まで再現されていなかったランダム学習を再現する条件を数学的に探った結果導かれた条件、"我々は運動する前から暗黙のうちに誤差を予測しており、その誤差の予測が脳活動を決定する"という要素である。既存のモデルでは予測不可でありながら提案モデルでのみ予測できる現象を数値シミュレーションにより予測し、その予測を実験的に実証した。さらに、既存のベイズモデルで説明されてきた運動学習における不確実性の影響(Kording, 2004, Nature)、誤差の大きさの影響(Wei, 2008, Jnp)は、我々の誤差の予測モデルで説明ができること、さらには別のモデルで再現されていた現象を同じ枠組み、同じパラメータセットで再現できることを確認した。以上、既存のモデルを包括・超越しながらも提案モデルのみが予測できる現象の存在も示したことから、提案した「誤差の予測」モデルは運動学習の統一理論モデルとなる可能性が高い。次年度では提案した運動学習モデルを意思決定に応用することで、「誤差の予測」が意思決定における重要な要素であることを示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
運動学習と意思決定の共通原理を解明するために、先ずは新たな運動学習のモデルの構築に取り組んだ。論文として出版するまでに至り(Takiyama, Hirashima, Nozaki, 2015, Nature Comm)、当初の計画通り進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
運動学習と意思決定の共通原理を解明するために、提案した新たな運動学習モデルを意思決定へと応用する。具体的には同じ課題を2回学習すると再学習の速度が速くなる"セービングス"という現象や(Smith, 2006, PLoS Biol, Fusi, 2007, Neuron)、課題の変化頻度が学習速度に影響すること(Burge, 2007, j Vis, Behrens, 2007,Nat Neurosci)は運動学習、意思決定で共通して報告されている現象であり、同様のモデルが提案されている。我々が提案した誤差の予測モデルはこれらの現象も統一的に再現できるため、誤差の予測モデルを意思決定に応用することで、これらの現象を意思決定において再現できるか否かを検証する。
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