1.ストレスによる報酬・遅延情報処理への影響の詳細を明らかにできた。 遅延選択課題において、異なるストレス下における行動と自律神経反応の変化を計測した。選択行動によって報酬や罰が起きる形で心理的ストレスを科したところ、罰が起きうる場合に、選択行動の障害(不適切な選択の頻度の上昇)、交感神経優位(心拍上昇、瞳孔散大)の状態が観察できることを明らかにできた。H26年度では報酬か音、報酬か罰、音か罰が起きうるというブロック単位で解析を行った場合の結果のみであったが、平成27年度ではさらにデータ量と動物数を増加した結果、試行単位の傾向も明らかにできた。すなわち、心拍数や瞳孔径が上昇し、交感神経優位の状態である試行では選択の誤りが起きやすいことを明らかにできた。 2.1の課題遂行時のセロトニン細胞が多く分布する背側縫線核およびこの投射先である大脳基底核線条体(尾状核)の単一神経細胞記録を行った。背側縫線核では細胞によってストレスレベルが高い(嫌悪刺激が含まれる)場合に発火頻度が多いものと少ないもの、異なるタイプが観察された。 尾状核においては、これまで、報酬獲得行動の価値を表現しているとされていたが、そのような細胞は前交連の前レベルに多く、罰刺激が含まれるブロックで発火頻度が増加する細胞は前交連の後レベルに多いことが示された。 このことから、「報酬を得る」だけでなく、「嫌悪刺激にも対抗して行動を起こす」メカニズムも線条体に含まれていることを明らかにした。
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