将来の報酬のために辛抱強く振る舞うということは将来の報酬の予測に基づく適応行動でありモデルベースの機構で行われる。申請者らはこれまでラット及びマウスを用いたIn vivoでの研究から、セロトニン神経細胞の起始核の一つである背側縫線核のセロトニン神経活動が、遅延報酬獲得のために報酬が与えられる小窓にノーズポークをし続ける行動(報酬待機行動)をしている際に辛抱強さを増進させることを報告してきた。これらの結果は、報酬獲得のために動きを抑えた状態を維持する必要があるとき、背側縫線核セロトニン神経活動が活性化されることでその自制的な行動制御を可能にしていることを示している。 本研究は、将来獲得できる報酬を辛抱強く待つことに関わるセロトニン神経系は将来の予測を利用するモデルベースの機構を用いて適応的な行動制御に関与するとの仮説のもと、遅延報酬待機行動を制御する神経基盤の解明を目的とする。 これまでに遅延報酬獲得課題においてセロトニン神経細胞の光刺激による待機行動促進効果はどのような状況でより効果が発揮されるかを調べるため、遅延報酬獲得課題において報酬の確率および量を変化させた実験を行った。その結果、セロトニン神経活性化による報酬待機行動の促進効果は、将来もらえる報酬の確率に依存し、量には依存しないことが明らかになった。 さらに将来報酬が何時獲得できるかが不確実な場合、セロトニン神経活性化による待機行動促進効果にどのような効果があるかを調べた。その結果、将来報酬の時間的不確実性が大きくなると、待機行動促進効果がより大きくなることが明らかになった。
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