研究領域 | 予測と意思決定の脳内計算機構の解明による人間理解と応用 |
研究課題/領域番号 |
26120733
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
南本 敬史 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, チームリーダー (50506813)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サル / セロトニン / 意思決定 / 受容体 / PET |
研究実績の概要 |
本研究は、報酬獲得行動の意思決定におけるセロトニンが果たす役割について、将来報酬の割引率という「報酬価値依存的な意思決定の制御」と、情動のコントロールを通じた間接的な「報酬価値非依存的な意思決定への介入」という2つの側面について、神経基盤を明らかにすることを目的とする。 H26年度はセロトニンの受容体サブタイプがそれぞれ上記意思決定の2つの側面において果たす役割の特定を試みた。マカクサルを対象に5-HT1A、5-HT1B、5-HT2A、5-HT4受容体の分布と密度をPETで測定し、それぞれの受容体阻害剤について、50%程度阻害する濃度をPETにより定量した。それぞれの受容体阻害剤を投与した状態で、(1)報酬量、(2)報酬遅延、(3)報酬コストをそれぞれ操作した意思決定課題をサルに遂行させ、生理食塩水注入時のコントロールデータと比較した。5-HT1A受容体阻害において特異的に報酬価値に無関係に拒否するという意思決定への介入が一定頻度で生じた。一方、報酬遅延を操作した行動課題において、5-HT4受容体を阻害した場合に特異的に遅延報酬割引が亢進することが明らかとなった。これらの結果から、報酬獲得行動の意思決定におけるセロトニンが果たす役割について、将来報酬の割引率という「報酬価値依存的な意思決定の制御」には5-HT4受容体、情動のコントロールを通じた間接的な「報酬価値非依存的な意思決定への介入」には5-HT1A受容体、というように異なる受容体サブタイプを介したセロトニン伝達が意思決定の異なる側面にそれぞれ関与している可能性を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26において、セロトニンが関与する意思決定のメカニズムとして、将来報酬の割引率という「報酬価値依存的な意思決定の制御」と、情動のコントロールを通じた間接的な「報酬価値非依存的な意思決定への介入」という2つの側面について、異なるセロトニン受容体を介したセロトニン伝達がそれぞれ関与するという神経基盤の一端を明らかにすること ができた。
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今後の研究の推進方策 |
得られた知見をもとに、セロトニンの意思決定への関与を回路レベルに落とし込んだ理解につなげるべく、脳活動記録計測や薬物の脳局所注入などを組み合わせ研究を進める。
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