本研究は、報酬獲得行動の意思決定におけるセロトニンが果たす役割について、将来報酬の割引率という「報酬価値依存的な意思決定の制御」と、情動のコントロールを通じた間接的な「報酬価値非依存的な意思決定への介入」という2つの側面について、神経基盤を明らかにすることを目的とする。 H27年度は低セロトニンが報酬価値非依存的な意思決定への介入を行っている脳内機序を明らかにするために、セロトニン神経細胞の自己受容体を刺激しセロトニン神経活動や放出を減弱させることが知られている5-HT1A受容体の作動薬投与と、コントロール条件における行動課題遂行中のサルを対象に[15O]H2O-PETを用いた賦活試験を行った。その結果、5-HT1A受容体作動薬負荷条件において前部帯状皮質、後部帯状皮質、海馬、扁桃核において有意な脳活動の低下を見出した。これらの脳部位は共通して5-HT1A受容体が豊富に存在することから、情動のコントロールを通じた間接的な「報酬価値非依存的な意思決定への介入」には5-HT1A受容体を介した帯状皮質-扁桃核/海馬ネットワークが関与している可能性が示された。
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