研究実績の概要 |
性は連続する表現型(スペクトラム)であるとの新たな概念を提唱し、従来の二項対立的な性から多様な性へと性を再定義することが本領域の目標であった。この目的の達成のため、約5年間、遺伝、内分泌、環境要因が性スペクトラムを成立させるメカニズムを解明する研究を推進した。その結果、30年間誰も疑わなかったほ乳類性決定遺伝子の常識を覆す研究成果(立花ら, Science 2020)、ステロイド代謝酵素が魚類の性分化カスケードの最上流因子であったことを示す成果(菊池ら、Curr Biol 2019)、生殖細胞のメス化機構を解明した成果(田中ら、PNAS 2020)、魚類における性ステロイドの新たな役割の解明した成果(大久保ら、Curr Biol 2021)など、性研究分野において特筆すべき重要な成果が数多く生み出された。さらに、本領域の研究推進は、社会的にも性の多様性を知らしめることにもつながった。 領域終了後は、具体的な活動として、総括班メンバーにより構成されている総括班会議を複数回開催した。そこでは、新たな性関連の学術変革領域研究の創出に、「性スペクトラム」領域研究の成果とノウハウをどのように活かしていくのかについて議論した。国内の様々な研究集会で成果発表を行い、性は連続する表現型であるとの領域研究の成果を広める活動を行った。海外で開催された脳と生殖腺の性分化シンポジウムに計画班メンバーが参加し、口頭発表およびポスター発表を行った。それにより、「性スペクトラム」領域研究の成果を、海外の研究者にも広く周知する活動を行った。さらには、主だった計画班メンバーと公募班メンバーによって、「性スペクトラム」領域研究の集大成となる著作「Spectrum of Sex」(Springer社)を執筆した。
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