本研究領域では,外部エネルギーを受け取ることで機械的な構造変化を起こし,これを利用して別の形のエネルギーへと変換する分子装置を,「発動分子(molecular engine)」と名付け,これを構築するための基礎学理を築くことを目的として研究を推進してきた。これを実現するため,これまで異分野として独自に活動してきた合成化学,分子生物学,生物物理学,ソフトマター物理学,計測科学等の専門家が連携して叡智を結集することで,ナノスケールの分子素子を組み上げ,さらにそれらをミクロスケールに組織化することにより,超高効率エネルギー変換システムの構築を目指している。このような,異分野融合研究を積極的に推し進めるため,これまでに領域内部での研究連携を積極的に推進するともに,対外的にも,化学,生物,物理系の関係学会で積極的に共催シンポジウムを開催し,発動分子科学の概念の普及に努めてきた。その結果として,積極的に分野融合研究を推し進める中で,当初の期待を超える成果をあげることができた。これをふまえ,一つの融合分野として発動分子科学のコンセプトとその学理をしっかりと根付かせ,さらに多くの分野の研究者の参入をうながしつつ,継続的に研究を発展させる基盤を作ることを目的に,本領域の成果とりまとめの報告会と将来展望を議論するシンポジウムを対面形式で開催した。また,領域期間中の研究成果ならびに種々の研究活動をとりまとめた報告者を作成した。
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