我々は過去と現在と未来を区別しながら生きている。ヒトで特に発達したこの時間の意識-こころの時間-はどこからどのように生まれるのか。本領域は、「こころの時間学」領域を継承して発展させ、以下の5つの成果を挙げた。 1.「こころの時間」の機能を発揮する人工神経回路を構築した。2.様々な「時間地図」の機能と成因を明らかにした。具体的な成果としては、(1)楔前部に現在が表現されていること、(2)リズム知覚とリズム運動における小脳の役割、(3)時間長の知覚地図の存在(右頭頂葉)、(4)齧歯類が数分レベルの認知課題を解く能力とその神経基盤などがある。 3.「退屈な時間はなぜ苦痛なのか」などの日常の内観と神経活動の関係を明らかにして報告した。4.新たな「こころの時間」の操作法を開発した。これには、(1)脳内ヒスタミンを増加させる薬物による記憶想起の回復の機序の解明、(2)パーキンソン病患者の時間認知障害の改善につながる計時トレーニング法の開発などがある。5.ヒトとヒト以外の動物、成人と子供、の共通点と相違点を解明した。 本研究では、1) 5計画班と31公募班(前期17班、後期14班)が達成した研究成果を、更新して、5個の目標との関連を評価して、研究成果報告書(様式C18)にまとめた。2)さらに 和文誌の特集号「時間の神経科学―時を生み出すこころと脳の仕組み」(臨床神経が書く2023年8月号)として出版して、広く社会一般に公開した。 3)また、計画班A01が主催してきた時間言語フォーラムの成果をまとめるために会議を開催し、成果をとりまとめる書籍の原稿を準備した。以上を通じて所期の5目標が達成されたことを確認して、その成果を広く社会に公開した。
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