2023 Fiscal Year Comments on the Screening Results
クオリア構造学:主観的意識体験を科学的客観性へと橋渡しする超分野融合領域の創成
Project Area (Abbreviation) | クオリア構造学 |
Project/Area Number |
23A101
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Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
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Area Organizer |
土谷 尚嗣 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究室長 (80517128)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Summary of the Research Project |
主観意識と客観的な物質としての脳は、全く異なる世界に属すのだろうか? 意識の中身であるクオリアと脳はいかに関係しているのか? 意識と脳の問題は、科学的な興味に留まらず、現実社会における人の気持ちの理解の困難に伴う問題にも直接関わる。意識のクオリアは、客観的な言語で定義することすら難しいため、従来の意識研究では、知覚刺激を固定し、経験を「見えた・見えない」という二値的な判断に還元し、その神経相関の探求を試みた。近年、我々は視覚クオリア間の類似度を大規模に計測することでクオリアの構造を特徴づけ、その神経相関とその情報構造を明らかにする新パラダイムを確立した。本領域は、現象学・発達・構成論を加え、知覚と感情クオリアに集中することで、クオリア構造学を創成する。本領域の成果は、他者意識の理解や、動物や人工物の意識理解など、一般社会へも広く還元されうる答えを生み出す新融合領域の創成である。
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Outline of Opinions Expressed in the Review Results |
本研究領域は人間の意識という困難な対象を探求する意欲的な研究であり、全体的に完成度が高く、実現可能性と国際優位性も高いと評価できる。学術変革領域研究(B)「クオリア構造」を発展させ、現象学、認知発達科学ほか多様な関連分野を専門とする研究者を新たに加え、各計画研究がそれぞれ明確な問いと方法を持って独自性の高い研究をしながら、理論的基礎、方法論、データなどの点で計画研究間の連携も十分考慮された計画となっている。一方で、研究テーマとして実験心理学・脳科学の比重が高く、本研究領域の更なる発展のためには人文社会科学的なテーマ(意識研究で生じうる倫理的・法的・社会的課題への対応など)の充実が望まれる。
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