2025 Fiscal Year Comments on the Screening Results
心情認知学:ダイナミックなこころの機微を理解し寄り添う社会の創成
Project Area (Abbreviation) | 心情認知学 |
Project/Area Number |
25B102
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Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (B)
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Area Organizer |
上田 祥行 京都大学, 人と社会の未来研究院, 准教授 (80582494)
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Project Period (FY) |
2025-04-01 – 2028-03-31
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Summary of the Research Project |
こころを豊かにする技術を創生するには、我々が抱くこころの機微とも呼べる多様なこころの状態を理解し、概念として扱える理論が必要である。本領域では様々なこころの動きについて、主観や生理指標、関与する神経基盤を包括し、その理解を「心情認知学(Psychosentience)」として体系化する。本領域では、複数の情動が共起している状態が私たちのこころの基本的な在り方であるという考えのもと、情動がどのように複合しているかを包括的に示す概念を“心情”と定義する。文化や経験、場の状態といったコンテキストと、生体情報および言語表現を掛け合わせて表現することで、日常で感じるこころの機微から死生に関わる強い想いまでを一つの連続体として扱うための基盤を構築する。
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Outline of Opinions Expressed in the Review Results |
本研究領域は、従来の「こころの状態を一つの情動カテゴリに帰着させる」感情モデルから脱却し、感情を構成主義的視点から再考、多様な情動の複合体としての「心情」をモデル化する試みである。コンテキストを事前分布、生体情報と言語表現を尤度(ゆうど)とするベイズ推定を用い、検証と応用が可能な心情モデルの構築を目指す点でねらいは明確である。大規模言語モデルによるリッチなコンテキスト情報の推定や、沈黙を含む多様な心情表現のデータ化を可能にするメタ対話の活用、グリーフケアを対象としたモデルの検証といった要素は、本研究領域の独自性と実現可能性を支えている。これにより、心理学や認知神経科学における感情理解の枠組みを刷新し、新たな人間観の形成に寄与することが期待される。また、感情推定技術として工学的応用の可能性を持ち、広範な波及効果が見込まれる。研究チームは若手研究者で構成され、心理学・工学・医学の学際的連携が図られているが、人文学分野からの支援を得ることで、さらに包括的で豊かな成果が期待される。
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