2017 Fiscal Year Annual Research Report
Unified understanding of ocean mixing processes and impacts
Project Area | Ocean Mixing Processes: Impact on Biogeochemistry, Climate and Ecosystem |
Project/Area Number |
15H05817
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安田 一郎 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (80270792)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増田 周平 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, グループリーダー (30358767)
西岡 純 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (90371533)
郭 新宇 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (10322273)
原田 尚美 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 研究開発センター長代理 (70344281)
伊藤 進一 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (00371790)
日比谷 紀之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (80192714)
羽角 博康 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (40311641)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 海洋混合学 / 鉛直混合 / 海洋物質循環 / 海洋生態系 / 気候変動 / 潮汐 / 乱流 / 海洋循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉛直混合の実態の解明を通じて、北太平洋において、どこでどのような鉛直混合が働き、栄養塩を含む中深層水が湧昇し、親潮や黒潮に影響を与え、気候を変え、生物生産の維持と長周期変動につながるのか、混合過程を軸として統合的に解明し、新しい学術領域「海洋混合学」を構築するために、総括班を組織する。本新学術領域の目的を達成するために、作業部会を設置し、計画研究・公募研究間や分野間、観測とモデリング等手法間の有機的連携を図った。本領域の基盤をなす、現場観測航海を実現し多くの成果が得られるよう、共有の乱流観測機器を導入・整備等を行う研究支援チーム等を通じて、班や研究分野を超えた協力体制を作り、多数の観測航海を成功させた。国際活動支援班を通じた研究者の招聘・派遣等、国内・海外研究機関との交流を図った。全体会議・国際会議・国内学会でのシンポジウム・若手会を企画・運営し、次世代の研究者・若手の育成を図った。 H29年度は、6月にH28年度成果報告書を出版、中間評価資料を提出し、10月に中間評価のヒアリングを受けA評価を受けた。作業部会1/2の主催で行なった研究目標に対するレビュー論文が「海の研究」に掲載された。作業部会の会合が8回にわたり実施され目標達成に向けた議論を深めた。9月には若手会主催のサマースクールを別府で開催した。ニュースレター5・6号を発行し、HPを通じて研究のトピックスを紹介した。北太平洋横断・ルソン海峡・日本周辺海域OMIX白鳳丸3航海を含む研究航海34航海を実施し、現場観測が大きく進展した。研究支援チームがこれら20航海で用いられる観測機器の維持・整備した。国際活動として15件を実施した。学会・国際会議などにおいて14件のセッション・シンポジウムを開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
鉛直混合過程とその変動が、海洋循環・物質循環・気候・生態系の維持と長周期変動に与える影響を解明し海洋混合学を創設するという全体目標を達成するために、3つのサブ目標 1)鉛直混合分布と北太平洋中深層循環、2)栄養塩の輸送と海洋生態系への移行過程定量化、3)18.6年潮汐振動と関連する長周期気候海洋変動と水産資源変動)を設定し、3作業部会を通じて連携を図ってきた。全体目標に対するレビューが学会誌「海の研究」に出版され、現状の認識を共有した。課題1については、高速水温計を様々な観測機器に取り付けて鉛直混合を観測する手法がほぼ完成し、深海に至る鉛直混合分布が明らかにされ始めた。観測された混合観測を直接モデルに同化するデータ統合システムを整備し、潮汐鉛直混合分布を取り入れた高解像度海洋モデルが開発され、海洋循環や気候への影響が明らかにされつつある。課題2については、国際共同観測を含む現場観測によって、黒潮が海山・海嶺や浅瀬を乗り越える際に発生する強い乱流や強い潮汐混合が、台湾海峡、トカラ海峡や伊豆海嶺、ルソン海峡などに存在し、強乱流に伴う栄養塩(硝酸塩)鉛直輸送過程が、黒潮の生産性を高める可能性を指摘した。親潮やその源流域においても、鉄や栄養物質が千島列島周辺での強い潮汐混合によって表・中層に供給され、その後の海洋循環による水平輸送を通じて、西部亜寒帯海域の高い生物生産を維持するという仮説が実証されつつある。課題3については、鉛直混合を18.6年周期で変動させた大気海洋結合気候モデルが開発され、新規開発の耳石微量同位体分析技術を活用してマサバの成長に好適な環境が明らかにされ始め、環境場及び魚類モデルを用いた研究の基盤が整備された。以上のように計画は順調に進み、H29年度には太平洋横断航海を含む34航海を実施する等、現場観測が大きく進展したことは特筆に値し、研究は想定以上に進行していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
広域の鉛直混合分布が現場観測から得られるようになるに従い、モデルで用いられている混合分布と観測される分布との差が問題になってきた。混合分布をモデルにどのように組み込むか、観測とモデルを併せ、整備された同化モデルを活用し、混合分布をWG1を通じて随時更新する。混合による栄養塩輸送と生態系への移行の定量化、については、今後隣国との共同観測やモデリング、WG2を通じて、さらなる定量化とメカニズムの解明を図る。親潮源流域であるロシア海域の航海がH30年度に計画されており、これらの海域での混合・鉄・栄養塩などの統合的観測やWG2を通じて、北太平洋西部亜寒帯での高い生物生産を支える仕組みを明らかにする。潮汐18.6年周期とそれに関連する長周期海洋・気候・生態系変動については、観測データ長が十分でなく、18.6年周期を証明できる長いデータは実測では難しい。気候や生態系に対する18.6年周期混合変動の影響についての確証を示すために、モデルによって観測と整合する現象を再現し、どのような道筋で気候や生態系にどのような変動が生じるのか、明らかにする。水産資源の長周期変動については、魚類の耳石の同位体分析を通じて水温等の成長履歴を復元する手法を開発し、資源変動要因を明らかにする。18.6年周期の約3倍の50-70年周期変動は、主要魚種の資源変動周期と同期している。モデルでこの長周期変動が再現されるならば、この問題の解決の可能性がある。また、潮汐混合の振幅が大きくエルニーニョや18.6年周期変動など気候変動に大きな影響が示唆されるインドネシア海域での混合観測航海の実施実現に向けて注力する。
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Research Products
(35 results)