2018 Fiscal Year Annual Research Report
Why does the Universe accelerate? -Exhaustive study and challenge for the future-
Project Area | Why does the Universe accelerate? - Exhaustive study and challenge for the future - |
Project/Area Number |
15H05887
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村山 斉 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (20222341)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 伸彦 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (50290854)
|
Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
|
Keywords | 宇宙物理 / インフレーション / ダークエネルギー / ダークマター / 素粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究年度の特筆する成果は、すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam(HSC)で観測取得されたデータに基づき、約1000万個の銀河の形状における重力レンズ歪み効果を観測することに成功し、銀河などの宇宙の構造の形成の度合いを表す物理量を精密に測定し、その結果と欧州宇宙機関 (ESA) の宇宙背景放射観測衛星Planckおよび他の宇宙観測の結果と組み合わせることで、宇宙最大の謎であるダークエネルギーの性質についても知見を得たことだ。具体的には、重力レンズの測定結果は、Planck衛星が予言する宇宙模型と比較して宇宙の構造の形成の度合いはそれほど大きくないという不一致だが、全体の約10%のデータを用いた結果であり、単なる限定的なデータ量による統計的な不定性なのか、一般相対性理論と宇宙定数に基づく宇宙の標準模型の綻びを示唆しているか今後の進展が十分期待される。 研究領域全体を俯瞰すると、各領域での横断的な成果が確認された。具体的にはA01班の原始ブラックホール研究への展開、B01班の雲中の氷が作る前景偏光を初めて見つけた、などSimons Arrayプロジェクト論文も多数執筆され、B02班では前述の通り重力レンズの結果が順調に成果を出している。B03班ではPFS開発が国際協力体制のため各国の事情を抱え、各種難しい舵取りが必要とされる中、メトロロジーカメラのすばる望遠鏡への設置が済み鋭意取り組みを進めている。B04班ではD01班と連携して、加速膨張測定のfeasibility studyを開始した。C01班ではswampland conjectureが提案されるなど順調な展開をみた。 昨年度総括班会議で提案の市民講演会シリーズも、公募研究含めた各計画研究代表者に協力を得て地方含め6ケ所での開催となり広く研究成果の普及に貢献することが出来た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で記載の通り、「広天域深宇宙のイメージングによる加速宇宙の暗黒成分の研究」B02班を中心としたHSC観測データに基づく研究成果のみならず、研究領域全体に各領域での横断的な成果が着実に確認されている。特にoverviewの論文は宇宙科学の分野でトップ1%論文に入っている。その後もデータの解析が進んで論文が出ており、特にcosmic shearに関する論文はB02, A02, A03全部に関わる分野をまたぐ重要な結果である。 H30年度末に開催された京都大学基礎物理学研究所での総括班会議を含めた新学術領域「なぜ宇宙は加速するのか?-徹底的究明と将来への挑戦-」研究会、その直後に続く新学術「加速宇宙」国際シンポジウム“Accelerating Universe in the Dark”には、幅広い年齢層の研究者160名程が参加した。研究会では、公募研究を含めた各計画研究の現状、将来の展望、また研究成果などを交えつつ包括的なレビューをする機会となった。また、国際シンポジウムでは宇宙のダーク成分に関する幅広いトピックの専門家を招聘し、各々のトピックについて、理論、観測、また実際の宇宙論観測の現状・展望など詳しい議論だけでなく、横断的に活発な議論を持つことができたことは、最終年度に向けて順調なステップと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる今年度は、観測・データ解析・理論の各領域を更に有機的に展開していく。具体的には、これまで連携が薄い理論班と究極班を中心とした量子情報関係の研究会を皮切りに開催する。年度末までに研究成果を横断的にまとめる各領域と公募を網羅する国際研究会を開催する。 また、広く一般への研究成果の報告として、各地で市民講演会を昨年度より引き続き開催し、草の根で理系離れの若年層への啓蒙を広めると共に、若手研究者のキャリアアップに資する施策の一貫として、領域の研究に関する学会講演等での成果発表を若手研究者が優先的に割り当てられるように配慮し、ローモデルとなる研究者と研究以外のキャリアパス相談的交流の場も設けていく。具体的には、若手のキャリアパスについての講演会を、ドイツでマックス・プランク研究所の所長をしているC01班の小松氏によって行うことを決めた。国外での研究職、また国内外問わず大学・研究所以外での活躍の仕方について、若手に知ってもらうことが目的である。 運営面では、領域代表者・計画研究代表者間の戦略ミーティングで確認した方針が一層スムーズに進捗するようにビデオ、電話会議の場を適宜設け、問題点への対処とより有効な研究方法を引続き検討しつつ、成果の取りまとめを進める。
|
Remarks |
領域全体のプロジェクトマネジメントをあずかる総括班のため、論文発表、学会発表はない。しかし、領域代表者村山のみによる論文は、各計画研究班に所属していないためここにリストした。
|
Research Products
(9 results)