2019 Fiscal Year Annual Research Report
Total arrangement of every section and cordination with other international projects
Project Area | Creation of the study of reconciliation |
Project/Area Number |
17H06334
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
浅野 豊美 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (60308244)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
波多野 澄雄 筑波大学, 人文社会系(名誉教授), 名誉教授 (00208521)
外村 大 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (40277801)
梅森 直之 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (80213502)
劉 傑 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (80288018)
土屋 礼子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00275504)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
|
Keywords | 文化記憶 / 感情 / ナショナリズム / メディア / 歴史認識 / 歴史記憶 / グローバル化 / 人権 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究成果の発信と国際的ネットワーク構築のため国際シンポジウムを複数開催した。まず日中戦争に対する従来の研究を「和解学」という新しい視野で展開させる試みとして、「東アジアにおける戦時動員の位相―その衝撃と遺産」を題に、20名以上の中国人研究者を招聘した。次に日韓問題をめぐっては『帝国の慰安婦』の著者である朴裕河を招き、慰安婦問題に関する一連の講演会や研究会を行った。他に韓国国会の文喜相議長の講演会をも開催し、天皇戦犯発言への謝罪と徴用工問題を打開するための新しい提案を打ち出した。和解学の社会的な波及効果の拡大を図るべく、研究代表者の浅野豊美がテレビ・新聞を生かして和解学のエッセンスを発信した。若手研究者の育成を主眼として、また、「和解学」という新しい学問を作るため、計画班内部の討論にとどまらず、各班を跨ぐ定例研究会である「領域会議」を8回開催し、20名以上の研究分担者・研究協力者が参加する合宿を行った。さらに、各班の研究成果をまとめるために、和解学叢書の執筆を進め、第一巻〈総論〉はすでに入稿された。出版に向けた具体的な研究発表を中心に行い班の結束を固めながら、外部からのコメントを常に受けた。 プロジェクトのウェブサイトも多言語対応に改修され、研究分担者および研究協力者のエッセイや東アジア歴史紛争和解辞典の項目が充実された。和解や紛争解決に関連した英語の著作物の翻訳を進めるとともに、英語による大学院教育を推進するための世界トップ大学プロジェクトや、日韓二国間交流事業などと連携しながら、領域代表が英国とドイツで招待講演を行った。和解に向けた国際的連携を固めながら、英語による出版に向けた準備作業を行なっている。国際共同研究の集大成として、年度末にアメリカ、ドイツ、韓国、ニュージーランド、オーストラリアなどからの研究者を集め、大型国際シンポジウムも行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホームページの充実とマスコミの紹介によって社会的認知度も高まった。国際的連携の基盤も整えられつつある。「和解学」に関する国際共同研究の輪が広がり、2020年度8月に「国際和解学会」をドイツを拠点に成立させるべく準備を進めている。 諮問会議を通じて、各方面の学会において影響力のある研究者からの助言を受けつつ学際的方法確立を重視している。また、班長会議を週ごとに行い、各班を跨ぐ領域会議を8回開催し、各班の進捗状況を確認し、課題を共有した。 ホームページが多言語化対応に改修され、歴史紛争和解事典の項目が徐々に充実してきた。和解学叢書の第一巻が入稿され各班が担当する巻の執筆も進んでいる。英語による出版に向けての準備も、大きな方向性が固まってきた。 早稲田大学内部に設立した国際和解学研究所が主催する「和解学講座」を複数会開催し、各班を超えて議論を深めつつ、英語による成果を土台として英語による出版を進めるための場所を作った。また、研究協力者として迎えた研究者の具体的な研究テーマに即しながら、和解学的な視点がどのように実践されるかの議論を続けている。
|
Strategy for Future Research Activity |
各班の研究成果の充実を受けて、第四年目には和解学叢書を刊行するとともに、ドイツで国際和解学会を成立する予定である。そのために和解学とは何であり、何であるべきなのか、「東アジア発の紛争解決学」の視点から研究を展開し、特に集合的な「感情」を歴史的記憶と関連させつつ探りながら方法論の確立と拡散を図りたい。東アジアの歴史的空間としての特性を国民形成と帝国形成が重なった特殊なものとしてとらえ、その中に現代の「我々」がいるという認識の下で、紛争解決学が新しい紛争を国民感情の衝突という形で生んでしまう構造について、少なくとも国際的な合意をみられるように、議論の焦点を当て、国民として、同時に市民として、主体としての個人の立っている位置を意識し点検していくこと、そのために欧州の内部における歴史問題研究者や、記憶文化と歴史的記憶について理論的に研究している研究者との連携を図りつつ、東アジアにおいて集合的な感情と、それを支える歴史記憶を研究対象とすることを心がける。そのような方針のもとで、国際的連携を充実させ、新しい学問としての和解学の実現を図っていく。
|
Research Products
(63 results)