2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Precise Formation of a Catalyst Having a Specified Field for Use in Extremely Difficult Substrate Conversion Reactions |
Project/Area Number |
15H05798
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西林 仁昭 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40282579)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | アンモニア / 鉄 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究室ではこれまでにピロール骨格を有するPNP型ピンサー配位子を持つ鉄、コバルト、バナジウム窒素錯体による触媒的アンモニア生成反応の開発に成功してきた。一連の触媒を用いた反応で、より高活性な反応系の開発を目指して検討を行う過程で、ベンゼン骨格を有するPCP型ピンサー配位子を持つ鉄窒素錯体を設計した。ピロール骨格よりもベンゼン骨格の方がより強い電子供与性基として働くことが期待される。分子設計に基づき対応するPCP型ピンサー配位子を持つ鉄窒素錯体の合成に成功した。対応する配位窒素分子の赤外吸収の伸縮振動はより低波数側に観測されており、予想通りに窒素固定反応に適した骨格を持っていることを示している。このPCP型ピンサー配位子を持つ鉄窒素錯体を用いた触媒的アンモニア生成反応を行ったところ、触媒的にアンモニア及びヒドラジンが生成することが明らかとなった。生成したアンモニア及びヒドラジンの生成量は対応するPNP型ピンサー配位子を持つ鉄窒素錯体を触媒として利用して同反応条件下で生成したアンモニア及びヒドラジンの生成量よりも多くなった。これは当初の予想通りに配位子の分子設計が大変うまく行ったことを示している。また、予備的なDFT理論計算の結果は、PCP型ピンサー配位子を持つ鉄窒素錯体の方が、PNP型ピンサー配位子を持つ鉄窒素錯体よりもより高い反応性を示している。残念ながら、ヒドラジド錯体やニトリド錯体などの想定される反応中間体の実験的な観測には現時点では成功していないが、原料として利用している中性の鉄窒素錯体から一電子還元を受けたアニオン性鉄窒素錯体の生成を示唆する予備的なDFT理論計算による結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究室で従来から使用していたピロール骨格を有するPNP型ピンサー配位子の代わりに、ベンゼン骨格を有するPCP型ピンサー配位子を持つ鉄窒素錯体を分子設計し、実際に合成に成功し、更に物性を明らかにすることに成功した。触媒的アンモニア生成反応にもより有効な触媒として働くことを見出した。一連の研究成果は鉄窒素錯体を用いた触媒的アンモニア生成反応の新たな一面を明らかにしたものであり、今後の展開が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は達成した一連の実験結果を論文にまとめることに注視する。また、得られた知見を鉄触媒を用いた反応に留まらず、モリブデン触媒を用いた反応系に応用し、より高活性な反応系の開発に取り組む。
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Research Products
(54 results)