2018 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of novel hybrid catalysts by introducing a transition metal complex into an antigen binding site of monoclonal antibody
Project Area | Precise Formation of a Catalyst Having a Specified Field for Use in Extremely Difficult Substrate Conversion Reactions |
Project/Area Number |
15H05807
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山口 浩靖 大阪大学, 理学研究科, 教授 (00314352)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | モノクローナル抗体 / 遷移金属錯体 / 不斉触媒 / フリーデル・クラフツ アルキル化反応 / 軸不斉 / 立体選択性 / エナンチオ過剰率 / 不斉誘起 |
Outline of Annual Research Achievements |
遷移金属錯体とモノクローナル抗体との複合体を用いることで、従来の有機金属錯体では実現できなかった立体特異的な触媒反応制御を目指した。これまでにビナフチル化合物 (BN) のR体 (BN (R))、S体 (BN (S)) または両者のラセミ体(BN (rac))をマウスに免疫して、BN (R)に特異的に結合するモノクローナル抗体と、BN (S) に特異的なモノクローナル抗体をそれぞれ単離することに成功している。これらの抗BN抗体は、ビナフチル骨格を有するリン酸系有機分子触媒や 1,1-ビ-2-ナフトールの軸不斉も認識することがわかった。抗BN抗体は 1,1-ビ-イソキノリン(BIQ) を配位子とする種々の金属錯体にも結合した。抗BN抗体とBIQを配位子とする銅錯体 (BIQ-Cu) の存在下、フリーデル・クラフツアルキル化反応を行った。BIQ-Cu 単独ではラセミ体の生成物が得られたのに対し、抗体R44E1存在下では88% のエナンチオ過剰率で反応が進行した。抗体とBIQ-Cuとの解離定数並びにターンオーバー数に基づいて系中に存在する遊離のBIQ-Cu の寄与を除外すると、本抗体-金属錯体複合体は99%以上の極めて高いエナンチオ選択性で反応を触媒していることがわかった。ビナフチル化合物に結合しないモノクローナル抗体やアルブミンタンパク質存在下ではこのような選択性は見られなかった。モノクローナル抗体が形成する特異なタンパク質空間に金属錯体を取り込むことにより、不斉が誘起されたと考えられる。抗体を用いた人工金属酵素では初めてのC-C結合形成反応であり、抗BN抗体との超分子形成によりBIQ-Cuを不斉触媒として利用した初めての例でもある。軸不斉認識抗体を第二配位圏として利用することにより、金属錯体のみの系よりも収率が向上し、不斉が誘起できる触媒反応を実現することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モノクローナル抗体を第二配位圏として利用することにより、金属錯体のみの系よりも収率が向上し、不斉が誘起できる触媒反応を実現することに成功したことは特筆すべきことであり、この知見をもとに今後の研究方針がさらに明確になったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果から、モノクローナル抗体が銅錯体に結合することにより、フリーデル・クラフツ アルキル化反応が立体選択的に進行することがわかった。この結果は、抗体が銅錯体に結合することによって形成される空間がキラル環境として機能しているのか、抗体が銅錯体の配位子に結合することにより金属錯体に不斉が誘起されて触媒反応が起こったのか、明確に区別すべきと考えた。今後、銅錯体に直接結合するモノクローナル抗体を作製することにより、第二配位圏としての抗体の役割を明確にする。
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Research Products
(18 results)