2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Interaction and Coevolution of the Core and Mantle: Toward Integrated Deep Earth Science |
Project/Area Number |
15H05829
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
入舩 徹男 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 教授 (80193704)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 大輔 岡山大学, 惑星物質研究所, 准教授 (90346693)
小松 一生 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), その他 (50541942)
境 毅 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 講師 (90451616)
西 真之 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 講師 (10584120)
石松 直樹 広島大学, 理学研究科, 助教 (70343291)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 実験技術開発 / 焼結ダイヤモンド / ヒメダイヤ / 中性子 / 放射光X線吸収実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、タングステンカーバイド(WC)、焼結ダイヤモンド(SD)とナノ多結晶ダイヤモンド(NPD=ヒメダイヤ)を中心とした超硬材料を用いた、高温・高圧発生領域の拡大とともに、これらを用いた新たな実験手法の開発を行なった。とりわけ主に以下の点についての技術開発をすすめるとともに、本計画研究内及び他の計画研究との連携のもと共同研究を推進した。 SD・WCを用いた川井型マルチアンビル装置(KMA)における、圧力・温度の発生可能領域の拡大を行なった。圧力に関しては、比較的低温の1000K程度ではあるが、120万気圧を越えるマントル-核境界(約135万気圧)にせまる発生に成功した。またWCを用いた温度発生に関しても、共同研究の成果として下部マントル領域での3800K程度の高温発生を、25万気圧程度の圧力下で可能にした。 NPDを用いたダイヤモンドアンビル装置(DAC)への応用に関しては、2段加圧式DACの開発による500万気圧領域の発生に成功するとともに、大型DACを用いた中性子回折データの取得が40万気圧程度まで可能なことを確認した。一方、高圧下でのNPD-DACを用いた高圧下での局所構造解析においても新たな成果を得た。更に他の計画班との共同による、核-マントル境界領域での変形実験手法の開発や、同位体測定用標準試料への応用なども大きく進展した。また、NPD粒径の更なる微小化と、その弾性的性質の解明に関する研究も開始した。 これらの技術を中心とした新たな技術を基に、計画研究班内外のメンバーとの共同研究も推進した。この結果、モデルマントル物質の超高圧下での融解と元素分配挙動、内核を構成するFeの変形実験、大陸地殻関連物質の下部マントル深部での挙動、下部マントル深部での新たな含水相の合成など、本領域に関連した様々な成果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SDとWCを用いた圧力と温度領域の拡大に関しては、ほぼ予定どおりの技術開発が進展した。また、計画研究班外との共同研究により、独自のNPD製乳鉢を活用することにより新たな加熱材料の開発を行い、想定以上の極めて高い温度の発生に成功した。この技術は現在のところWCを用いた25万気圧程度の圧力下に限られているが、今後SDとの組み合わせにより、下部マントル深部領域の融解実験等への応用も見込まれる。 NPDを利用したKMAによる圧力発生は、平成29年度に100万気圧を越えることを目標としたが、NPD合成用大型超高圧合成装置の不具合により、大型NPD合成が困難な状態となり、90万気圧程度までの圧力発生に留まっている。平成29年度後半においては、このような理由から少し方針を変更し、6-8-2加圧方式のKMAを用いた100万気圧以上の圧力と、1300K以上の高温発生を目指した技術開発を目指した基礎的な実験を開始した。 NPDを利用した新たな成果として、2段加圧方式のDACによる500万気圧(圧力スケールによっては600万気圧以上)の発生に成功し、また回転DACの開発により核-マントル境界領域での変形実験が可能になった。一方で、大型NPD-DACを用いた高圧下中性子回折実験に関しても、当初の目標を大幅に上回る圧力下でのデータ収集が可能になるなど、平成29年度の計画を大きく上回る成果が得られている。更に、単結晶DACに対して両面加熱CO2レーザーを応用した下部マントル鉱物の融点決定においても重要な成果が得られるなど、新たな技術を駆使したマントル-核相互作用と共進化に関連した研究の新たな進展がみられる。 以上の点を総合的に勘案すると、一部当初の目標が達成に至っていいない部分もあるが、その他の点で予想以上の成果も得られており、計画研究として全体に順調に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
SDとNPDの応用に関する技術開発を集中的に行う。SDのKMAの応用に関しては、圧力発生限界に近いところまで達成されている。従って、特に下部マントル領域での高温発生技術の開発とともに、この技術を用いた下部マントル物質、スラブ、核物質の相関係・融解関係・元素分配の研究も計画研究班独自に、また他の班との連携により行う。 NPDの応用に関しては、大型超高圧合成装置の不具合解消のため別途予算要求を行っているが、この結果により大型NPD合成の可否と、通常のKMAへの応用に関する研究が大きく左右される状況である。従って、研究の中心を6-8-2加圧方式のKMA技術の開発に焦点を移し、NPDを第三段アンビルとして用いることにより、核-マントル境界に対応する135万気圧領域の高圧発生と高温発生技術の開発を目指す。 なお、7 mm程度までのNPD合成には支障がないため、DACを中心とした超高圧技術への応用は従来通り推進する。特に回転DACを用いた核-マントル境界付近の圧力下でのマントル物質の変形実験、大型DACを用いた高圧中性子回折実験、DACを用いた高圧下EXAFS実験、2段加圧DACを用いた超500万気圧発生を目指した実験など、NPDの特徴を生かした独創的技術開発をすすめる。 一方で、従来の数10 nm程度の粒径を持つNPDとともに、10 nm以下の超微粒NPDの合成を行う。その機械的特性、特に弾性的性質や硬度の粒径依存性について、X線その場観察実験や超音波測定などを併用して明らかにする。またホウ素を始めとした微量元素添加による導電性NPDや、ナノ多結晶立方晶BNの開発など、本研究に関連した新たな超硬素材の開発も行う。
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Research Products
(77 results)