2015 Fiscal Year Annual Research Report
機能多様性ペプチド複合中分子の高効率合成と生体内機能発現
Project Area | Middle molecular strategy: Creation of higher bio-functional molecules by integrated synthesis. |
Project/Area Number |
15H05843
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田中 克典 国立研究開発法人理化学研究所, 田中生体機能合成化学研究室, 准主任研究員 (00403098)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | ペプチド / 天然物 / 生体内合成化学治療 / 中分子 / ハイブリッド |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度では、まずアルギニン残基に対するageladine A誘導体の複合化について検討した。これまでに広範囲に渡る化合物の調製には限界があった。そこで報告者はまず、アルギニンの翻訳後修飾に注目して、ageladine Aのコア構造部分である2-アミノイミダゾールの効率的な合成法開発に取り組んだ。すなわち、グアニジン官能基に対して塩基性条件下、不飽和アルデヒドを作用させることにより、温和な条件下でイミンの形成、分子内環化反応、続く芳香化反応による2-アミノイミダゾールの合成を実現した。次いで同フラスコ内に続けて試薬を追加することにより、さらに数種類の反応を進行させ、アルギニン残基を含むageladine A誘導体を最大で34%の収率で得ることに成功した。さらに置換グアニジン、またはその原料となるアニリンを原料として、フラスコ内に次々と試薬を導入するだけで、従来合成できなかった様々な天然物複合体を迅速に調製できた。 次いで、これらワンポット・バイオインスパード・カスケード合成で得られた多様性中分子を用いて、様々な活性評価を行った。その結果、マウスから誘導したES細胞をnMレベルでニューロンへと強力に分化誘導する、あるいは阻害する化合物を見出した。一方、これらの化合物はアストロサイトへの誘導や阻害には影響を与えない。天然物であるageladine Aには、ニューロン分化活性に影響を与えるDyrk1Aの阻害活性があるが、今回調製した中分子にはその活性は全く見られなかった。すなわち、報告者のワンポット・バイオインスパード・カスケード合成を経た新規なageladine A誘導体合成により、Dyrk1Aの阻害活性を完全に切り離すことに成功した。このように、アルギニンとの中分子複合化により本来の天然物の機能とは異なる新しいニューロン分化誘導活性を発現させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度ではアルギニン残基を含む中分子ペプチドとの複合化までには至らなかったが、アルギニン残基との複合化を実現する高効率的なワンポット天然物複合化法を実現した。さらにこの手法で合成した誘導体の中から、新しい機構でES細胞をnMレベルという効率でニューロン分化誘導を制御する中分子を見出した。以上の成果から、研究は順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度では、グアニジン、またはアルギニンを基質としたワンポット・バイオインスパード・カスケードageladine A誘導体合成に成功した。さらに、ES細胞から誘導される神経細胞をニューロンへと誘導したり、阻害する化合物郡を発見した。これらの分子は、アストロサイトへの誘導には関わっておらず、ニューロンに選択的な稀な化合物郡であり、天然物とペプチドの複合化により、それぞれの機能とは異なる新しい活性を発現させることに成功した。そこで平成28年度以降は、これら天然物・ペプチド複合体が有する新規なニューロン分化活性に焦点を当て、下記の研究を行う。 まず平成28年度では、確立したワンポット・バイオインスパード・カスケード手法を、さらにニューロンへの選択的な分化・阻害機構解析のツールとしても展開する。既に確立した手法に従って、ビオチンや光反応性置換基、あるいはクリック反応基であるアジドやアセチレンを導入したアルギニン含有ペプチドを調製し、生物活性機構を解析するプローブ分子群を一挙に調製する。これらの分子郡を用いて、ニューロン誘導化への機構を解析する。 さらにこれらの知見を基に、より選択的で創薬にも使用可能な天然物・ペプチド複合体を検討する。平成27年度に続けて、より複雑な、そしてある機能を持つペプチド内のアルギニン残基に対して、ageladine A誘導体のワンポット合成を検討する。ペプチドには、アルギニン残基を含む膜貫通型ペプチド、細胞内導入ペプチド、細胞内で選択的に局在するペプチド、さらには領域内で合成される様々な環状ペプチドに対して、共役ジアルデヒド、アンモニアや一級アミン、置換アルデヒドを順次作用させることにより、多様性を持つ中分子複合体を合成する。これらの中分子複合体を用いて、動物レベルでも神経細胞をより効率的にニューロンへと分化させる分子を見出す。
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Research Products
(27 results)
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[Presentation] Oxidative stress-related substance, acrolein, regulates biosystems by reacting with polyamine2015
Author(s)
Ayumi Tsutsui, Tamotsu Zako, Yoshiki Yamaguchi, Tong Bu, Rie Imamaki, Shinobu Kitazume, Naoyuki Taniguchi, Mizuo Maeda, Katsunori Tanaka
Organizer
Pacifichem 2015
Place of Presentation
Hawaii Convention Center(Hawaii, USA)
Year and Date
2015-12-17 – 2015-12-17
Int'l Joint Research
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