2016 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡開放系を利用する反応集積化による精密合成反応の開発
Project Area | Middle molecular strategy: Creation of higher bio-functional molecules by integrated synthesis. |
Project/Area Number |
15H05845
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松原 誠二郎 京都大学, 工学研究科, 教授 (90190496)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅野 圭佑 京都大学, 工学研究科, 助教 (90711771)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 非平衡開放系 / 有機分子触媒 / フロー・マイクロ / キュバン / イメージング / 重水素 / ポリケチド / ペンタピリン |
Outline of Annual Research Achievements |
1) δ-ヒドロキシ-α,β-不飽和ケトンに対してアルデヒドを作用させるとヘミアセタールがわずかに平衡混合物中に存在し,ε位にヒドロキシ基を持つα,β-不飽和ケトンの形をとる。ここに(R)-TRIPを触媒として加えると6員環環化が進行し,光学活性1,3-ジオキサンが生成することを見いだした。この反応を利用するとβ,δ-ジヒドロキシケトンを光学活性の形で得ることができ,ケトン部位をヒドロキシ基に立体選択的に変換することによりポリケチドのユニットである1,3,5-トリオールを光学活性の形で合成することができ,またカルボン酸に変換するとコレステロール低下薬であるatrovastatinの重要な部分構造であるβ,δ-ジヒドロキシカルボン酸となる。現在この部分合成を達成したので,atrovastatin合成を行い,反応の有用性を明らかにする予定である。 2) ヨードアレーン,1,2-ジアレニルエチン,および二亜鉛メチレン間の三成分カップリングがニッケル触媒により,最初にヨードアレーンのカルボニッケル化がエチンに対して信仰した後,二亜鉛メチレンとのクロスカップリングが進行し,炭素-炭素二重結合に三つのアレーンが置換したアリル亜鉛が形成されることを見いだした。この三成分カップリングは,官能基選択性にすぐれており,アリル亜鉛内には,エステルやホウ酸等の官能基が存在しても問題なく変換反応が進行する。 3) 正立方体の炭素骨格であるキュバンは,高い対称性を有する分子骨格であるので,多官能基化する際の母核として興味深い。しかし,その変換反応は未だ十分に検討されていない。今回キュバン上のヨウ素原子を亜鉛アート錯体によりメタル化し,求電子剤と反応させることができることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記概要の1)の連続的ポリケチド合成によるatrovastatin合成に関する研究で,有機分子触媒を用いたポリケチドのユニット合成において,モデルとなる素反応の開発は完了した。この方法は,モデル化合物では,高い不斉収率と反応効率を示し,その潜在能力の高さは十分に示せたものの,ターゲットとするatrovastatinの前駆体に対しては,まだ十分な高い不斉収率を示すことができていない。この不斉変換反応においては,動的速度論的分割,不斉誘導,ジアスレオ選択的反応の三つの要素が組み合わさっているが,用いた(R)-TRIP以外の触媒の検討を必要としている。上記2)の多芳香環置換アリル亜鉛合成法の開発に関しては,概ね予定通りの成果を示せすことができ,特にアリールホウ酸部位を置換基として有するアリル亜鉛は,分子構築において非常に重要な反応剤となることを期待している。しかし,炭素-亜鉛結合及び,炭素-ホウ素結合の両者を有効に使う変換反応をさらに示す必要がある。上記3)のキュバン骨格の官能基化法の開発においては,キュバン上のヨウ素を自在にメタル化できる手法とそのメタル化キュバンの反応を示せたことは,大きな進展であると言える。今後,1,2,3-置換体を合成する際,不斉脱プロトン化等を利用し,光学活性1,2,3-置換キュバンを合成することを試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記1)の 連続的ポリケチド合成によるatrovastatin合成に関する研究において,(R)-TRIPというC2対称性二官能性有機触媒を用いたが,この触媒の分子設計を検討し,新規な触媒を創成する必要がある。また,この変換反応においては,平衡生成物でわずかに存在するヘミアセタールを利用するので,このことが反応の効率を低下させている。そのため複数の反応条件を連続的に組み合わせることが可能なフロー法を適用することを考えている。合わせて反応機構の研究も着手する予定であるが,計算化学においては国際共同研究を計画している。上記3)のキュバン骨格の官能基化法の開発においては,原料となるキュバン化合物の合成の困難さが非常に問題となっている。この部分でも可能な限りフロー法を適用し,合成の簡便化を検討する。また合成したキュバン誘導体の生理活性についての検討を国際共同研究にて推進する。
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Research Products
(12 results)