2017 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡開放系を利用する反応集積化による精密合成反応の開発
Project Area | Middle molecular strategy: Creation of higher bio-functional molecules by integrated synthesis. |
Project/Area Number |
15H05845
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松原 誠二郎 京都大学, 工学研究科, 教授 (90190496)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅野 圭佑 京都大学, 工学研究科, 助教 (90711771)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 中分子医薬 / ペプチド創薬 / 有機分子触媒 / 不斉合成 / キュバン / 有機亜鉛 / ハロゲン-金属交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
中分子戦略における重要課題である中分子医薬の創成において,環状ペプチド模倣分子構築は非常に重要なテーマである。具体的にどのような形が必要かということは未だ明らかではないが,自在にアミノ酸を空間に配置できるような置換基盤となる分子骨格を反応集積の概念に基づき,迅速に効率よく合成する方法を開発することを目的として研究を行った。環状ペプチドが医薬として三箇所で作用部位に相互作用を行う際の模倣分子として,例えばα-ヘリックスと同程度の大きさと空間的拡がりを持つ分子骨格を合成し,その分子中に変換が容易な官能基を適切に選択的に配置することが必要と成る。そこで,α-ヘリックスと同等の大きさを有するシクロヘキサンに注目した。また,このシクロヘキサン以上に空間的拡がりが形成される立方体炭化水素であるキュバンに注目した。 まず,二官能性有機分子触媒による光学活性多置換シクロヘキサン骨格の一挙合成を試みた。二官能基性アミノチオウレア触媒をζ-ケト-エノンにアセトンシアノヒドリン存在下作用させると,二カ所の不斉中心を完全に制御し,光学活性6員環エーテルを合成できることを見いだした。続いて,ヨードキュバン体の選択的金属交換化反応を検討した。キュバン骨格は,8つの頂点がある正立方体分子骨格であり,空間に八方向の拡がりを持つ興味深い分子である。キュバン分子の頂点にはラジカル反応を用いてヨウ素や臭素を導入することは可能であるが,現在サイトセレクティブなハロゲン化を検討している。得られたハロゲン化物の内,ヨウ素体に関して金属交換反応を試みた。生じる物はsp3の三級メタルであり塩基性が強いので,効率の良い生成法と塩基としてではなく求核剤としての反応性を実現する必要がある。ジアニオン性亜鉛アート錯体を用いたところ,効率よく,金属交換と種々の求電子剤との反応を実現できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の中分子医薬創成のための三ペプチド置換骨格の合成において,六員環のテトラヒドロピラン環状の2,4,位のエカトリアル位にケトンおよびエステルを,そして6位にニトリルをアキシアル位に立体選択的に導入する反応を開発し,目的とする物質の合成には到達できた。しかし,6位のニトリルをエカトリアル位に導入する手法の開発に到達することができていない。また,キュバンに対する三つの置換基の導入は,達成できたものの1,2,4-置換体の合成のみであり,光学活性体の存在する1,3,5-体の合成に到達できていない。また,実際の医薬への応用の面での共同研究の進展が今後の課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は特にキュバン骨格の官能基化を中心に研究をすすめていく。現在,比較的容易に手にはいる1,4-置換体のヨウ素化物を金属-ヨウ素交換により種々の誘導体に変換し,三つ目の置換基をサイト選択的ハロゲン化法により導入している。これ以外に配向基によるキュバン修飾方法を開発する必要がある。手法としては,キュバンカルボン酸アミドのアミドを配向基として利用し,現在多くの報告がなされてきているsp3炭素上のC-H結合活性化の触媒を順次利用していく。これらの手法により光学活性体の存在する1,3,5-体の合成を実現し,光学分割,酵素による光学分割を伴うエステル加水分解などで,光学活性1,3,5-置換キュバンを合成する。そして,不斉C-H結合活性化を試み直接的光学活性1,3,5-置換キュバン合成を可能にする。
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Research Products
(14 results)