2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Discovery of the logic that establishes the 3D structure of organisms |
Project/Area Number |
15H05864
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
近藤 滋 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (10252503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 寛貴 名古屋大学, 生命農学研究科, 特任助教 (60737899)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 成虫原基 / 細胞シート / 折り畳み / 3D形態 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
研究はカブトムシとツノゼミの2つを対象にして、原基折り畳みと成虫の3D形態との関係の解明を目指している。 カブトムシ:28年度の主な進展は、角原基の折り畳み構造が、蛹角の完全な3Dを内包していることを証明できたことである。実験は3通りの方法で行った。まず、終齢幼虫の頭の殻を取り除き、腹に圧力を与えることで、原基が膨らみ、蛹角の形状になることを証明した。次に、その変形に細胞シートの伸展が関与していないことを証明するため、原基を切り出し、ホルマリンで固定したのちシリコンチューブに固定し、空気を送り込んで膨らますことで、正確な蛹角ができることを示した。最後に、連続切片から取得した原基の折り畳み形状を、計算機の中で膨らませることでも、同じ変形が起きた。この結果から、蛹角の完全な3D構造は、角原基の折り畳みにコードされていることが完全に証明された。(論文審査中) ツノゼミ:コスタリカに研究員を派遣し、最も注目しているヨツコブツノゼミの採集に成功している。また、羽化直前の幼虫も少数ながら確保しX線CTにより、折り畳み形状のデータを取得できた。まだ、解析は十分ではないが、多種多様の形状を見せるツノゼミのツノが、基本的には似た折り畳み様式を持っていることが示唆され、今後の研究の指針が得られた。 技術的な進展:カブトムシ、ツノゼミともに、原基の3D形状のデータ取得方法の試行錯誤に多くの時間を費やしたが、その成果は十分にあり、今後の研究の加速が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調であるが、いくつか、改善の必要があると思われる点がある。現在、カブトムシ、ツノゼミ共に、3D形態の測定には、高精度のX線CTを使うことが最も有効であることが解ったが、装置を所有していないので京都産業技術研究所で使わせてもらっている。必然的に、占有できる時間が非常に限られ、また、測定サンプル数も多くできないので、研究の進みが限定される事態になっている。改善方法としては、X線CTを購入することが一番有効である。単独の研究費では、購入が不可能であるため、総括班の共通機器として購入することを考えているが、それでも足りないため、現在、他の研究費、あるいは大学の予算との共同購入の方法を模索中である。 もう一つは、ツノゼミのサンプルの取得が十分には行えない点である。これは、研究の性質上、いかんともしがたい面があるが、現地研究者との共同研究の形をとることで、こちらから人員を派遣しなくてもサンプルが取得できれば、大いに改善する可能性がある。そのため、次回のコスタリカ遠征では、その目的での話し合いも行ってくる予定である。 この研究には、3D変形を計算するプログラムを必要に応じて作ることが必須であるが、現在は、近藤研究室に在籍する医学部の学生に依存してしまっている状況である。当面はそれでも間に合うが、学生が卒業してしまった時に、それを引き継げる能力の研究員がいないことが将来的な問題として出てくると考えられ、対処の必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度までに基礎的なデータの取得、実験方法の確立、がほぼ終わったので、29年度からは、折り畳みと3D形態の間をつなぐ一般則の発見、および、任意の3D形態を作り出す技術の創出へと舵を切りたい。 カブトムシ:カブトムシに関しては、異なる3D形態として(1)成長途中の角、(2)形態の異なる異種のカブトムシの角、(3)角形成関連遺伝子のRNAiによる変形角、の3つについて、折り畳みと3D形態の測定を行う。3年以内に、折り畳みと3D形態をつなぐ計算ソフトを作成し、その関係性を単純な数理モデルとして作り上げられれば理想的であるが、一朝一夕にはできないので、まず今年度から計算ソフトのプロトタイプづくりから開始する予定である。角の変形を自在にデザインするためには、皺が作られていく過程の細胞レベルのプロセスに関する情報も必須である。現在は、皺とそうでない部分の成長率の違い、細胞分裂の異方性などに着目して観察を行っているが、時間に余裕があれば、特異的に発現する遺伝子をクローニングしていくことも必要と考える。 ツノゼミ:29年度の最大の目的は、ヨツコブツノゼミの角原基の形成過程の時系列を取得することである。28年度に取得した終齢幼虫でデータの取れたものは2匹であり、まったく足りない。形成過程を詳細に記述するには、少なくとも20匹以上の成長過程の幼虫が必要となる。現在、現地の協力者に採集を依頼しているが、11月には、こちらからも遠征して採集を試みる予定である。
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Research Products
(9 results)
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[Presentation] モデルなしのモデリング2016
Author(s)
近藤 滋
Organizer
第26回非線形反応と共同現象研究会
Place of Presentation
明治大学(東京都・中野区)
Year and Date
2016-12-10 – 2016-12-10
Invited
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