2017 Fiscal Year Annual Research Report
組織の折りたたみと管形成の力学制御-神経管形成をモデルとして-
Project Area | Discovery of the logic that establishes the 3D structure of organisms |
Project/Area Number |
15H05865
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
上野 直人 基礎生物学研究所, 形態形成研究部門, 教授 (40221105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 誠 基礎生物学研究所, 形態形成研究部門, 助教 (10533193)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 発生 / 神経管形成 / ライブイメージング / 細胞移動 / 細胞変形 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度に発表した計画班員井上康博との共同研究論文に報告した数理モデル解析の結果は、細胞シートの折りたたみ形状と管の最終形態は頂端側と基底側の硬さのバランスにより決定されており、更に硬さバランスの変化に対する管の形態の安定性は細胞伸長により増強されることを予測している。この興味深い予測は生体組織のヤング率の体系的な計測により検証することが可能であることから、すでに導入し胚組織の弾性計測が確立した原子間力顕微鏡(AFM)を用いて神経管原基の頂端面の非破壊計測を体系的に行った。物理的に解離した神経板の頂端・基部側さらに裏打ちする中胚葉組織についてヤング率を計測し、時間空間的な硬さバランスのマッピングを行い予測の検証を行った。これにより、各組織の硬さは発生時間とともに変化し、異なる組織間の硬さのバランスも変化することが明らかとなった。こうした硬さバランスの変化を考慮した力学制御が数理モデルと実際の胚の両方で解析可能になった。さらに、実験的に中胚葉の硬さをアクトミオシン活性の亢進、抑制するなど人為的に変化させ、組織間の硬さバランスを変化させる実験系を確立でき、計測を待つだけとなっている。 また、細胞の移動に関する研究は担当していた博士研究員が平成28年度末で他大学へ異動となり、新しい博士研究員が平成29年度10月に着任した。原腸形成に参加する細胞集団の先端細胞(leading-Edge Mesoderm, LEM)で細胞内カルシウムの発火がみられ、その細胞内Ca2+の上昇が、細胞移動に必要なラメリポディア形成に必要であることなどをScientific Reports誌に発表した(Hayashi et. al., 2018)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経管形成の力学制御については数理モデルと実験発生生物学の連携が順調に進んでいる。集団的細胞移動のメカニズムについては担当する博士研究員の異動、その後任となる海外からの博士研究員の雇用、新しい研究手法の習得など、さまざまな要因があり、とくに、後者博士研究員が重篤な疾病に罹患し半年間の入退院を強いられたことは研究推進に大きな障害となった。そのような中にあっても細胞移動における細胞内Ca2+のダイナミクスの生理的意義を見出すことができたことは大きな進展であった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31(2019)年度は本領域の最終年度であり、本研究課題の中から今後の研究につながる芽を見出す研究へと展開したいと考えている。平成30年度に得られた新たな知見として、胚への遠心力による機械刺激の負荷によって、ERKの活性化を介して密着結合(タイトジャンクション, TJ)の構成タンパク質ZO-1がTJに局在することを見出した(Cell Systems, 2019に発表)。これにより細胞・組織がより細胞-細胞接着を基盤とした統合性を高め、組織変形に対して強固になっているものと予測された。これは、力学刺激に対する組織の統合性を保つための生体の適応的応答である考えている。この細胞変形による力学感知からZO-1の局在化に至るまでの経路を明らかにし、神経管形成における同経路の寄与について解析する。この胚組織の応答を機械化学フィードバック(mechano-chemical feedback)と位置づけ、力学センサーとして機能するチャネルPiezo-1との機能的連携なども含めて、発生および形態形成における意義について検証していきたい。
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Research Products
(6 results)