2015 Fiscal Year Annual Research Report
大規模シーケンスとコンピューティングによるがんの進化と多様性の解明
Project Area | Conquering cancer through neo-dimensional systems understanding |
Project/Area Number |
15H05909
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小川 誠司 京都大学, 医学研究科, 教授 (60292900)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 総合生物 / ゲノム科学 / システムゲノム科学 / 総合生物 / 腫瘍学 |
Outline of Annual Research Achievements |
a)癌の起源と進化に関する解析。食道癌については、がん試料に加えて、非がん部粘膜より多数サンプリングを行い、全エクソン解析を実施した。アルコール過剰摂取・喫煙歴のある患者では、一見正常な食道粘膜組織にすでに無数のクローン性増殖が生じることが明らかとなった。また、脳腫瘍、大腸がん、肝癌、および尿路上皮がんに関しても、多数サンプリング試料において高深度シーケンスおよびエクソンシーケンスを行った。 b)全ゲノムシーケンスによる新たな発がんメカニズムの解析。48例の成人T細胞白血病・リンパ腫試料について、全ゲノムシーケンスを行い、宮野らにより構築された解析用パイプラインを用いて解析を行った。その結果、単一塩基置換、塩基の挿入欠失に加えて、従来の全エクソン解析では同定されなかったCARD11、TP73、IKZF2遺伝子の特定のエクソンに集積する微小欠失を含む、様々な構造異常が同定され、全ゲノム解析の重要性が確認された。 c)胚細胞系列の変異に関する解析。DDX41遺伝子について、多数例の孤発性骨髄系腫瘍に関する変異解析を実施した結果、DDX41の胚細胞変異は、孤発性の骨髄系腫瘍の3%内外で認められること、またこれらの症例の多くは、R525Hに集積する対側アレルの体細胞を伴っていることが明らかとなった。また、DDX41遺伝子変異については機能欠失アレルおよびR525Hアレルを導入したマウスモデルの作成がほぼ完了した。 d)臨床シーケンスの開発。乳癌、血液系腫瘍、大腸がんについて、候補遺伝子・染色体の異常を高感度に検出可能とする、標的シーケンスシステムを構築し、これまでに1000試料を越える腫瘍検体の解析を実施することにより、性能評価を行った。また、血漿および血球由来DNAについて、高深度シーケンスおよびdroplet PCR法を用いた微小腫瘍集団の検出システムを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
癌の起源と進化に関する解析については、脳腫瘍、大腸がん、食道がんについては、予定していた解析を大きく上回る症例のゲノムシーケンス解析が終了しており、その他の腫瘍についても、予定のシーケンス解析を実施した。また、脳腫瘍(Suzuki et al., Nature genetics, 2015)、大腸がん(Sawada, et al., Gastroenteology, 2015)については、主要な成果についての論文発表をおこなった。また、ATLの全ゲノムシーケンス解析についても、予定数を上回る症例の解析が完了し、その成果はNature genetics誌に掲載された(Kataoka, et al., 2015)。胚細胞系列の変異に関する解析についても、予想以上の成果が得られた。実際、今回の解析によって、DDX41の胚細胞性変異はこれまでに知られている最大の白血病の遺伝的リスクを説明する胚細胞性異常であることが判明した(Polprasert et al., Cancer Cell, 2015)。さらに、臨床シーケンス解析については、システム構築のみならず、これらを再生不良性貧血の大規模コホートの解析に応用することにより、白血病・MDSの発症以前に生じているクローン性造血とそのダイナミックスを初めて明らかにし、その成果はNew England Journal of Medicineに掲載された(Yoshizato, et al., 2015)。シーケンスは予定症例数を大きく上回って進捗していること、また上記の成果は、いずれも、国際的に極めて高く評価されている研究成果であり、その意味においても、研究は当初の予定以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の進捗を踏まえて、今後の研究計画としては、以下の研究を進める。 1)癌の起源と進化に関する解析では、食道癌、大腸がん、甲状腺癌および泌尿器系腫瘍について、前がん病変、健常組織を含めた多数サンプリングによるシーケンス解析をさらに進めることにより、これらのがんの発症とクローン進化の過程をその初期病変から解明することを試みる。 2)全ゲノムシーケンスによる新たな発がんメカニズムの解析。びまん性大細胞型リンパ腫、中枢神経リンパ腫、末梢T細胞性リンパ腫、およびMDSについて腫瘍および正常組織(頬粘膜ないしCD3陽性細胞)も、各48ペアについて全ゲノムシーケンス解析を行い、宮野らによる新規アルゴリズムを用いて単一塩基置換、塩基の挿入欠失、tandem duplication、遺伝子再構成を高精度に同定する。また、non-coding RNAの発現異常や構造異常に関わるゲノム変異を同定し、同定されたnon-coding RNAについては、癌化における意義について機能的な解析を行う。 3)胚細胞系列の変異に関する解析。家族性MDSの家系について全エクソンないし全ゲノムシーケンスを行い、MDSの発症に関わる胚細胞変異の同定を試みる。DDX41遺伝子変異については前年度までに作成した機能欠失アレルおよびR525Hアレルを導入したマウスモデルにおける経時的採血によって得られる試料のシーケンス解析を用いたMDSのクローン進化の検討を行う。Biobank Japanの試料を用いた次世代シーケンス解析により、骨髄系腫瘍におけるドライバー遺伝子の胚細胞変異の網羅的な探索を行う。 4)臨床シーケンスに関する検討。大腸癌検体1000例および甲状腺乳頭癌500例について既知のドライバー変異に関するターゲットシーケンスを行い、遠隔転移や予後と相関する分子マーカーの同定を行う。
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Research Products
(27 results)
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[Journal Article] Somatic Mutations and Clonal Hematopoiesis in Aplastic Anemia.2015
Author(s)
Yoshizato T, Dumitriu B, Hosokawa K, Makishima H, Yoshida K, Townsley D, Sato-Otsubo A, Sato Y, Liu D, Suzuki H, Wu CO, Shiraishi Y, Clemente MJ, Kataoka K, Shiozawa Y, Okuno Y, Chiba K, Tanaka H, Nagata Y, Katagiri T, Kon A, Sanada M, Scheinberg P, Miyano S, Maciejewski JP, Nakao S, Young NS, Ogawa S.
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Journal Title
N Engl J Med.
Volume: 373(1)
Pages: 35-47
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Aberrant DNA Methylation Is Associated with a Poor Outcome in Juvenile Myelomonocytic Leukemia.2015
Author(s)
Sakaguchi H, Muramatsu H, Okuno Y, Makishima H, Xu Y, Furukawa-Hibi Y, Wang X, Narita A, Yoshida K, Shiraishi Y, Doisaki S, Yoshida N, Hama A, Takahashi Y, Yamada K, Miyano S, Ogawa S, Maciejewski JP, Kojima S.
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Journal Title
PLoS One
Volume: PLoS One 10(12)
Pages: e0145394
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] GATA2 and secondary mutations in familial myelodysplastic syndromes and pediatric myeloid malignancies.2015
Author(s)
Wang X, Muramatsu H, Okuno Y, Sakaguchi H, Yoshida K, Kawashima N, Xu Y, Shiraishi Y, Chiba K, Tanaka H, Saito S, Nakazawa Y, Masunari T, Hirose T, Elmahdi S, Narita A, Doisaki S, Ismael O, Makishima H, Hama A, Miyano S, Takahashi Y, Ogawa S, Kojima S.
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Journal Title
Haematologica.
Volume: 100(10)
Pages: e398-401
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] Molecular profiling of MDS2015
Author(s)
Seishi Ogawa
Organizer
the 56th Autumn Meeting of the Korean Society of Hematology
Place of Presentation
Hotel Inter-Burgo, Deagu(Soul)
Year and Date
2015-11-06 – 2015-11-06
Int'l Joint Research / Invited
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