2017 Fiscal Year Annual Research Report
TRPチャネルおよび膜脂質による温度センシング機構の解明
Project Area | Integrative understanding of biological phenomena with temperature as a key theme |
Project/Area Number |
15H05928
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Research Institution | Okazaki Research Facilities, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
富永 真琴 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 教授 (90260041)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 昌宏 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (00183434)
久原 篤 甲南大学, 理工学部, 教授 (00402412)
内田 邦敏 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (20581135)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 生理学 / 神経科学 / 温度生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、イトマキヒトデ幼生は20度から25度の温度差の中で25度の温かい温度域へ集まった。イトマキヒトデ幼生のTRPA1 (PpTRPA1)を遺伝子クローニングして機能解析を行うと、PpTRPA1は侵害性化学物質のみならず温かい温度への嗜好性はなくなった。2、4種類の蚊(ガンビエハマダラカ・ステフェンスハマダラカ・ネッタイシマカ・アカイエカ)TRPA1の遺伝子をクローニングし、化学物質および熱による活性化を解析した。各種蚊TRPA1の化学物質および熱感受性が異なることを見いだした。3、定外来生物ヒアリのTRPA 遺伝子をクローニングして機能解析を行った。ヒアリTRPAの熱および化学物質感受性を電気生理学的に確認し、ヒアリの行動解析も行った。4、細胞膜ダイナミクスを、2次元ダイナミクスと3次元ダイナミクスに分類し、TRP等の膜チャネルと膜ダイナミクスの関係について研究を行った。巨大リポソームを細胞模倣膜として用い、生理活性物質(冷感剤:メントール、局所麻酔薬:リドカイン、テトラカイン)や化学合成したチャネルと膜との相互作用について、顕微鏡観察、核磁気共鳴法、熱量測定等の実験を行ない、感覚刺激と膜ダイナミクスの関係について考察した。(高木)5、シンプルな実験動物を用いて、3量体Gタンパク質とTRPチャネルを介した温度情報伝達や個体の温度応答に関わる分子の単離と解析を進めた。なかでも遺伝学的手法を用いて、従来は温度情報伝達への関与の報告のない遺伝子の温度応答への関与も示唆されている。(久原)6、 TRPM5チャネルの精製並びに人工膜への再構築に成功し、電気生理学的解析を行った結果、TRPM5チャネルの活性化にはPIP2並びにカルシウムが必要であり、これらの存在下においてTRPM5チャネルは温度上昇に伴い活性が増大することがわかった。(内田)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、温度感受性TRPチャネルの生理機能解析、人工脂質二重膜計測システムを立ち上げと精製グリーンアノールトカゲTRPA1タンパク質のチャネル機能解析、昆虫温度感受性TRPチャネル解析、温度感受性TRPチャネルの構造機能連関解析等いずれの研究においても大きな進展があった。2、メントール分子は、TRPチャネルだけでなく、膜自体にも影響を及ぼし得る。核磁気共鳴および顕微鏡観察を用いてモデル膜を研究することによって、メントールの2つの光学異性体(d-およびl-)は、膜との相互作用に於いてコレステロールの影響を強く受け、冷感に関係するl-メントールは、リン脂質の親水・疎水の境界領域における相互作用に特徴がある事が明らかになった。また、局所麻酔薬であるリドカイン、テトラカインについては、ラフト領域の熱不安定性を低下させる事が明らかになり、また不安定化の程度が、麻酔薬強度と対応している事も示された。(高木) 3、侵害性の化学受容ニューロンが温度に応答し、個体の低温耐性に関与することが示唆された。そのニューロンにおいて、エンドリボヌクレアーゼを介したアポトーシス関連分子が、低温耐性に関与することが示唆された。(久原)4、TRPM5の温度依存性は少なくとも細胞に存在する他の分子には依存しないことが示唆された。また、TRPM5はTRPV1やTRPM8など他の温度感受性チャネルと比較して、その温度依存性は小さいことが示唆された。(内田)
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Strategy for Future Research Activity |
1、温度感受性TRPチャネルのTRPV4, TRPV3, TRPA1の生理的意義の解析をさらに進める。TRPV1, TRPA1蛋白質を精製して、人工脂質二重膜計測システムを用いたさらなる解析を行う。細胞内温度計測システムとIRレーザーによる細胞内温度制御システムを確立させる。他の動物のTRPA1遺伝子のクローニングと機能解析をさらに進める。温度依存的な髄鞘形成のメカニズムを解明する。2、膜相分離構造の形成は、脂質間の疎水的相互作用により生じていると考えられているが、生理活性物質や金属イオン等によって、ラフト安定性が影響を受ける事から、親水的な相互作用の関与も無視できない。そこで、これまでの生理活性物質に加えて、カチオン類(金属イオン、ポリアミン)、あるいは酸化コレステロール等の生命活動に重要な物質による、膜との親水的・疎水的両方の相互作用が膜ダイナミクスやTRPチャネルの構造に与える影響について調べたいと考えている。(高木) 3、個体の低温耐性を指標に、温度情報伝達や温度応答に関与する新規遺伝子がさらに見つかってきたため、その遺伝子産物が温度受容体として機能するかを、従来発現していない感覚ニューロンで異所的に遺伝子を発現させ生理学的に検証する。(久原)4、 TRPM5チャネルの温度依存的活性化並びに不活性化メカニズムをコイルドコイル領域並びにポア領域の変異体を用いて検討する。他の温度感受性TRPチャネルの精製並びに人工膜への再構成を行う。(内田)
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Research Products
(83 results)