2018 Fiscal Year Annual Research Report
temperature sensing of cell cyctoplasm and cell nucleus
Project Area | Integrative understanding of biological phenomena with temperature as a key theme |
Project/Area Number |
15H05929
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
今本 尚子 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (20202145)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 核ー細胞質間輸送 / 熱ストレス / Hikeshi / Importin / 温度制御実験 / 熱ショックタンパク質Hsp70 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体にとって、Hikeshi輸送の駆動に不具合が起きると、様々な重篤な影響が現れることがわかってきた。しかし、Hikeshi輸送が駆動するメカニズムが未だに明らかになっていない。Hikeshi輸送は、その輸送基質であるHsp70の発現亢進がおこる酸化ストレスなどでは駆動せず、熱ストレスなどで、環境温度が高温になることではじめて駆動することがわかっている。Hikeshi輸送が温度依存的に駆動するのは、HikeshiやHsp70の物理化学的性質の変化によるのではないかと考えて、その解析をはじめている。一方、老化細胞の中ではHikeshi輸送が駆動しないことがわかり、温度の他に細胞内シグナリングがHikeshi輸送の駆動に関与する可能性も考えられる。最近、ストラスブール大学の研究グループとの共同研究を通して、細胞シグナル伝達などを担うprohibitin (PHB)のリガンドの一つが熱ストレスに依存したHsp70の核内輸送を低下することを見つけた。そのためPHBとHikeshiとの関係を調べている。 また、高精度な温度制御ができる熱ストレス実験系を樹立して、様々なImportinβファミリー輸送経路の輸送活性が低下する温度のthresholdを決定した。Importinβファミリー輸送経路の中では、Importinα/βが担う輸送が、41.5℃という低い温度で活性を失うことがわかった。Importinα/β輸送反応を担う輸送因子を調べると、Importinα分子だけが41.5℃で変性することがわかった。しかし、大きく3サブファミリーに分かれたヒトimportinαの中では、温度感受性になるサブファミリー(Rch1、NPI1)と、温度耐性になるサブファミリー(Qip1)があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以前の解析から、精製Hikeshiタンパク質と精製Hsp70/Hsc70タンパク質は、FCCS(蛍光相互相関)アッセイで、温度依存的に結合することがわかっている。精製タンパク質同士で結合が見られるが、結合には、ATPと、Hsp70がATP型になることが必要であった。SYPRO Orangeとreal time PCRを使ったthermal shiftアッセイで、精製Hikeshiタンパク質と精製Hsp70/Hsp70タンパク質それぞれの変性温度を調べた。その結果、どちらのタンパク質も変性温度は50℃であることがわかった。 7種類のprohibitinリガンドについて、熱ストレスに依存したHsp70の核内輸送に対する影響を調べた。7種類のリガンドの中でFluorizolineが、HeLa細胞とhTERT RPE1細胞の熱依存的なHsp70の核内輸送を阻害することがわかった。Fluorizolineの輸送阻害活性は、生細胞で見られたが、セミインタクト細胞を使った輸送再構築では見られなかった。FluorozolineはRAF・RASシグナリング経路を阻害すると報告されているので、Hikeshi輸送の駆動がRAS、RAF、MEKなどのシグナリングで影響を受けるか調べたが、影響は見られなかった。 Importinα/β輸送経路が41.5℃で低下する原因を、輸送再構成系で調べると、輸送因子中でImportinαだけが41.5℃で失活することがわかった。この温度でImportinαはImportinβに結合するがNLS基質やCASに結合できない。ヒトに存在する6種類のImportinαの変性温度をthermal shift assayで調べた。その結果、importinαのRch1ファミリーとNPI1ファミリーは温度感受性であったが、Qip1ファミリーは温度耐性であることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
Hikeshi輸送が駆動する温度は39.9℃である。それに対して、精製Hsp70/Hsc70と精製Hikeshiを用いて thermal shiftアッセイを行なった結果、どちらのタンパク質も、熱変温度が50℃くらいであることがわかった。このことから、HikeshiとHsp70の結合が、単純に両方のタンパク質の変性に依存するわけではないことがわかる。温度依存的なHikeshiとHsp70の会合が見られたFCCSの解析では、会合時のHsp70はモノマーではなく、オリゴマーであった。今後は、Hsp70が温度に依存してオリゴマー変換すること、そのオリゴマー変換がHikeshiとの結合に必要である可能性に関して解析を進める。Hsp70オリゴマーの生理機能を明らかにしたい。 ハーバード大学が発表したBio Plex database (Cell 162:425-440, 2015)によると、HikeshiはProhibitin(PHB)と相互作用すると報告されている。HikeshiとPHBが実際に相互作用するかを免疫沈降法やproximate アッセイなどで調べ、相互作用が見られた場合は、それがFluorizolineで阻害されるかを調べる。 大きく3つに分かれたヒトImportinαサブファミリーの中で、変性する温度が高いサブファミリーと低いサブファミリーがあることがわかった。それぞれのサブファミリーに対する特異基質を同定し、同定した基質の機能解析を通して、importinαが温度感受性であること、また、サブファミリー間で温度感受性に違いがあることの生理的意義を明らかにする。
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Research Products
(12 results)